胎盤を構成するトロホブラスト(栄養膜)細胞の異常は,妊娠高血圧症候群(HDP),胎児発育不全による低出生体重児(SGA)などの周産期疾患の原因となる。しかし,これまで正常なヒトの栄養膜細胞を体外で培養することができなかったため,これらの疾患の病因や病態には不明な点が多く残されている。最近,ヒト栄養膜幹(TS)細胞の培養が可能となったことで,周産期疾患(great obstetrical syndromes)の発症メカニズムの理解に向け可能性が大きく広がった。ヒトTS細胞を用いた疾患モデリングにより,診断バイオマーカーや新規治療法の同定,個別化医療の開発が期待できる。