胎盤は母児間を繋ぐ臓器であり,胎児の健やかな健康は正常な胎盤形成によって支えられている。さらに,胎盤形成不全は母体循環に影響を与えるだけでなく,胎盤から産生される抗血管新生因子により,母体の生命を脅かすことになる。世界では,年間約7.5万人の妊婦が妊娠高血圧症候群(胎盤形成不全を伴いやすい)によって死亡している。本稿では,妊娠によって形成される臓器である胎盤の形成過程およびその不全に関わるさまざまな分子メカニズムについて概説する。