Answer
ラクナ梗塞の成因と発症機序
NINDSの脳血管障害の分類第Ⅲ版1)で脳梗塞は,(1)発症機序(血栓性,塞栓性,血行力学性),(2)臨床カテゴリー(アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,その他の脳梗塞),(3)病巣(灌流域)による症候に分けられ,その組み合わせで診断を下すことが提唱された.脳梗塞の多彩な病態を捉え,治療方針の決定に有用である.ラクナ梗塞には血栓性と塞栓性の2つの発症機序が存在すると考えられる.
ラクナ梗塞とは単一の脳内の穿通動脈領域の梗塞を意味し,画像診断で神経症候を説明しうる部位に長径1.5cm未満の小梗塞巣を認めるが,梗塞が小さくて明らかでない場合もある.大きな動脈の閉塞による大きな梗塞の周辺に散在する小病巣はラクナと呼ばないし,血管性のものを指し,他の原因による脳実質病変を意味しない.
3~7mmのラクナは,lipohyalinosisによる血管閉塞で生じる.これは普通,直径40~200μmの脳動脈の高血圧性変化であり,一方では高血圧性脳出血の原因となりうる.5mm以上の比較的大きいラクナは直径200~800μmの太い穿通動脈内にみられるmicroatheromaによる.また穿通動脈入口部のアテローム(junctional atheroma)でもラクナ梗塞は起こる.この3つの成因は血栓性機序のラクナ梗塞と考えられ,高血圧,糖尿病,喫煙などが危険因子となる.一方,太い動脈(artery-to-artery embolism)や心臓(cardiogenic embolism)に由来する微小塞栓子による閉塞でもラクナ梗塞を来すことがある(塞栓性機序のラクナ梗塞).
米国でよく使われているTOAST(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment)分類は,脳梗塞を(1)large-artery atherosclerosis,(2)cardioembolism,(3)small-artery occlusion(lacune),(4)stroke of other determined etiology,(5)stroke of undetermined etiologyに分類している2).ラクナ梗塞に相当するsmall-vessel occlusionの定義としては,塞栓源心疾患がなく,病変と同側の頭蓋外血管に50%を超える狭窄がないことが必要となっており2),血栓性のラクナ梗塞のみを指している.したがって,大規模臨床試験でsmall-artery occlusionやsmall-vessel occlusionといえば血栓性のラクナ梗塞を指している.
全文記事
血栓症に関するQ&A PART6
3.脳 Q27 日本人で高血圧を有するラクナ梗塞に抗血小板薬を使う必要があるのでしょうか
掲載誌
血栓と循環
Vol.19 No.1 95-98,
2011
著者名
橋本 洋一郎
/
堀寛子
/
山本文夫
/
伊藤康幸
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
高血圧
/
脳血管障害
診療科目
脳神経外科
/
神経内科
/
血液内科
媒体
血栓と循環
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。