Summary  中枢性CO2/H+受容器(いわゆる中枢化学受容器)は延髄腹側表面近くに存在すると考えられてきた。最近の10年間の研究において,その細胞機構に関して注目すべき進展があった。中枢化学受容器として働くことができる細胞機構として,吻側腹外側延髄のretrotrapezoid nucleus(RTN)のグルタミン作動性ニューロン,延髄腹側表面のグリア細胞(ATPまたはアセチルコリン分泌細胞),延髄縫線核群のセロトニンニューロンなどが考えられている。特に,RTNのCO2受容ニューロンは転写因子Phox2bを特異的に発現していることが発見された。さらに新生児においては,RTN/Phox2b発現ニューロンはCO2感受性をもつと同時に,呼吸リズムジェネレーターを構成するニューロン(pFRG)であることが明らかになった。この総説では,中枢化学受容器について,RTN/pFRG Phox2b陽性ニューロンに関する最近の知見を中心に概説するが,これらの異なる細胞機構をもつ化学受容器は,生体におけるホメオスタシスの維持のために協調して働くものと思われる。