Summary  胸郭変形をきたす疾患は多岐にわたるが,慢性呼吸不全を呈する疾患は肺結核後遺症や脊柱後側弯症などの拘束性換気障害を呈する拘束性胸郭疾患(restrictive thoracic disease;RTD)が主たるものである。脊柱後側弯症はもとより,肺結核後遺症では胸郭成形術後などの外科的治療群で高二酸化炭素血症を伴ってくることが多い。高二酸化炭素血症の成因として夜間REM(rapid eye movement)睡眠期の低換気が重要と考えられている。高二酸化炭素血症を伴う慢性呼吸不全症例に対しては,酸素療法および陽圧人工呼吸療法が施行される。以前は,まず長期酸素療法が行われ,その後に高二酸化炭素血症が進行した時点で主として侵襲的な気管切開下の陽圧人工呼吸療法が追加されることが多かった。最近では鼻マスクやフェイスマスクを用いる非侵襲的換気療法(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)が広まってきたこともあり,最初にNPPVが導入され,必要な症例には酸素療法が追加されるようになってきている。長期在宅NPPVは,仏英およびわが国の比較的大規模なレトロスペクティブな調査を含むすべてのコホート研究において,生命予後やquality of life(QOL)の改善が報告されている。自験例の検討などから,RTDに対する長期NPPVの人工呼吸器設定ではTモードの優位性が示され,NPPV導入数ヵ月後の自発呼吸時のPaCO2の値が60mmHg以下になれば,生命予後が優れていることが明らかになってきている。夜間のNPPV使用時間も重要で,最低4時間は必要と考えられている。