はじめに  難治性心不全を呈する心疾患は高度な心筋障害を有していることが多い。いわゆる心筋症は文字通り心筋の疾患であり,拡大した心臓に対する左室形成や合併する僧帽弁逆流に対する僧帽弁形成術は,健常心筋の残存の程度により手術成績が依存し,その効果に限界があるのは当然であり,きわめて重症の心不全に対しては植え込み型人工心臓や心臓移植が選択すべき治療法である。しかし劇的な症状の改善の反面,人工心臓では人工物である以上,感染,血栓,機械的トラブルの可能性は常にあり,心臓移植では術後免疫療法のみならず,生活制限の厳重な管理を一生涯有する等適応には慎重であるべきである。左室形成術に多くの限界はあるが,従来の手術法の適応から離れた例でも著明な改善を長期に示すことも多くみられ,特に心臓移植が主にドナー不足から未だ一般的でないわが国では,手術適応や術式の検討による積極的評価が重要と思われる。