─先生の幼少期のことをうかがったことがありません。どんなお子さんだったか,どのようなご家庭で御育ちになったか,小さい頃の思い出をお聞かせください。

「父は大阪生まれで,旧制天王寺中学を卒業して熊本医科大学(現在の熊本大学医学部)で医学を学び,戦後は京都府立医科大学の整形外科に入局しました。学位は整形外科教室で取得していますが,その後は一般外科医の道に進んだようです。ちょうど府立医大に女子専門部が設立された時期で,母とはその頃知り合ったのだと思います」

「僕が生まれた頃は,大学から派遣されたかどうかはわからないですが,奈良市の小さな診療所に勤務しながら学位論文の最終的な仕上げをしていたそうです。僕の記憶にあるのは,父が京都府舞鶴の国立病院(現在の国立病院機構舞鶴医療センター)に赴任したあたりからです。舞鶴は雪が多くとても寒いところでした。舞鶴に3年ほどいて,父は生まれ育った大阪に戻り,母と一緒に開業しました。僕は物心ついたときは町医者の子どもでした」