メッセンジャーRNA(mRNA)医薬は,体内に直接mRNAを投与することにより,生体内で目的のタンパク質を発現させ,医薬効果を発揮する1)。このアプローチは,DNAを用いる方法とは異なり,ゲノムに組み込まれないため,遺伝子変異のリスクが低く,安全性が高いとされている2)。さらに,目的のアミノ酸配列がわかれば,迅速に設計できるという利点もある。実際,2020 年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中には,迅速なワクチン開発のニーズに対応する手段として,その効果が広く認知された。しかし,従来のmRNAは,医薬品として利用するにはタンパク質合成効率が不十分であった。また,DNAに比べてmRNAは不安定であり,mRNAの製造過程で生じる副産物は免疫応答を引き起こす可能性があった3)。本稿では,筆者らの研究を中心に,mRNAの純度,翻訳効率,安定性を向上するための取り組みについて概説する。
特集 核酸医薬の進歩と今後の展望
Ⅰ.基礎 2.mRNA創薬技術(化学修飾や構造化に基づくmRNAの機能向上)
掲載誌
The Lipid
Vol.35 No.1 20-28,
2024
著者名
高羽 未来
/
阿部 洋
記事体裁
抄録
/
特集
疾患領域
代謝・内分泌
診療科目
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
The Lipid
Key Words
mRNA医薬
/
キャップ構造
/
キャップアナログ
/
修飾核酸
/
化学キャップ化
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。