特集 副腎研究の最前線
Ⅰ.基礎 4.多彩なステロイドホルモンを「作り分ける」副腎のメカニズムと,その疾患における異常
掲載誌
The Lipid
Vol.34 No.2 33-38,
2023
著者名
杉浦 悠毅
記事体裁
抄録
/
特集
疾患領域
代謝・内分泌
診療科目
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
The Lipid
Key Words
ステロイドホルモン
/
副腎
/
イメージング質量分析
多彩な生理機能を調節するステロイドホルモンは副腎皮質の異なる層から生成される。われわれは,イメージング質量分析を活用し,副腎組織内の特定の層でのステロイドホルモンの産生を明瞭に描き出してきた。異なるステロイドホルモンを秩序だって産生する機構は,副腎皮質の「一方向性」の血流によって支えられ,これによりステロイドホルモンとカテコールアミンの正確な生成と放出が可能となると考えている。
実際,原発性アルドステロン症の患者副腎にみられるアルドステロン産生細胞クラスター(APCC)やアルドステロン産生腺腫(APA)において,アルドステロンと特定の病状で産生されるハイブリッドステロイドの局在を可視化した結果,腫瘍組織の不正な血流がハイブリッドステロイド生成の要因となることを示唆する画像データを得た。すなわち,通常は異なる層構造で生成されるアルドステロンとコルチゾールが,異常な血流の影響で混ざり合い,ハイブリッドステロイドが生じる可能性が考えられた。一連の研究においてイメージング質量分析は,ステロイドホルモンの領域特異的な産生メカニズムの評価に有効であった。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。