ホスファチジルイノシトール(PI)やそのリン酸化体であるホスホイノシタイドは発がんやがんの悪性化において重要な役割を果たしており,特にPI(3,4,5)P3やPI(3,4)P2はがん細胞の増殖,生存,移動,浸潤を促進する働きをもつ.また,PI(4,5)P2は細胞の上皮性を制御することでがん細胞の性質に影響を与える.これらの各ホスホイノシタイドの量は多数のホスホイノシタイド代謝酵素により調節されており,これらのホスホイノシタイド代謝酵素も発がんやがんの悪性化において重要な役割を果たしている.本項ではがんの発生や進展にホスホイノシタイド代謝がどのように関与するかについて紹介する.
「KEY WORDS」ホスホイノシタイド,代謝酵素,上皮性,PI(4 ,5)P2,アシル基