細胞膜に挿入されている,あるいは膜近傍に存在する蛋白質は,膜脂質により活性制御されることが古くから知られている.一方で,リン脂質分子群の微細な動態変化が,さまざまな蛋白質群に対しどのように作用するか,またその意義についてはいまだ明らかではない.われわれは細胞膜間のリン脂質輸送(外層から内層:フリップ,内層から外層への輸送:フロップ)を担うリン脂質輸送体群の機能解明を目指してきた.骨格筋線維の再生過程において,筋芽細胞同士が融合し,多核細胞(筋管)が形成される現象をモデル系とし,リン脂質輸送体の一つリン脂質フリッパーゼの機能解明を目指してきた.その結果,リン脂質フリッパーゼは筋芽細胞に発現するイオンチャネルの一つPIEZO1の活性化を正に制御すること,さらに同イオンチャネルの活性制御には,リン脂質のうちホスファチジルセリンの膜間輸送が関与することを見出した.
「KEY WORDS」リン脂質フリッパーゼ,ホスファチジルセリン,筋芽細胞,機械受容イオンチャネル,PIEZO1
「KEY WORDS」リン脂質フリッパーゼ,ホスファチジルセリン,筋芽細胞,機械受容イオンチャネル,PIEZO1