「はじめに」インスリンとの結合によりインスリン受容体が活性化されると,IRS(insulin receptor substrate)を介してPI-3キナーゼが活性化され,セカンドメッセンジャーとして細胞膜上にPI(3,4,5)P3(phosphatidylinositol 3,4,5-trisphosphate)が産生される。この結果,AktやS6K(p70 ribosomal S6 kinase)をはじめとするAGCキナーゼが活性化されることでインスリンによる多彩な代謝作用が発現する。PDK1(3-phosphoinositide-dependent kinase-1)は,これらのAGCキナーゼのactivation-loopのスレオニン残基をリン酸化することによりAGCキナーゼの活性化に関与する。PDK1を欠損する細胞では,インスリンやgrowth factorによるAGCキナーゼの活性化が著しく低下することから,PDK1はAGCキナーゼの活性化を担うマスターレギュレーターであることが示されている。
「Key Words」PDK1,PI-3キナーゼ,AGCキナーゼ,Akt,インスリン作用