前回まで上腕骨の論議を続けた.上腕骨は意外にもわかりにくい機能形態学的特徴を備え,内実としては,前肢の近位から遠位への概念的接続を担っていると考えることのできる骨である.そしてそれは脊椎動物の上陸史,地上歩行への適応形態を考えるとき,長軸を回転軸とした奇妙な捻じれを形状に残す骨であった1).さて,ここからは話を前腕に切り換えよう.上腕骨を近位と遠位の連結器と捉えるなら,前腕は当然,遠位部と考えるべきである.前腕は,橈骨と尺骨と呼ばれる二本の骨の組み合わせとして成り立つ.しばし,基本形として,橈骨・尺骨なる一組の存在を念頭に置こう.