【特集 骨代謝調節の新たな展開】
PTHの骨量増加作用
Anabolic effects of intermittent PTH
掲載誌
THE BONE
Vol.27 No.4 93-101,
2013
著者名
宮内章光
記事体裁
抄録
疾患領域
代謝・内分泌
/
骨・関節
診療科目
整形外科
/
リウマチ科
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産婦人科
/
腎臓内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
/
泌尿器科
媒体
THE BONE
副甲状腺ホルモン(PTH)は1日1回の間歇的皮下投与では骨形成促進(アナボリック作用), 骨量増加に作用する. 一方, 持続的静脈内投与あるいはPTHの分泌が持続的に亢進している原発性副甲状腺機能亢進症においては骨吸収の活性化が骨形成促進作用を上回り, その結果, 骨量の減少をきたす(カタボリック作用). PTH間歇投与によるアナボリック作用に関しては, immediate early遺伝子群の活性化が報告され, さらに最近ではPTHが骨細胞におけるスクレロスチン発現を抑制することによりアナボリック作用を発揮する機序が注目されるようになった. これに対し, PTH持続投与によるカタボリック作用においては骨芽細胞におけるRANKL発現の増加およびosteoprotegerin遺伝子の発現低下が特徴的とされる. 2010年10月, 国内上市された骨形成促進剤である副甲状腺ホルモン製剤{テリパラチド[ヒト遺伝子組み換えPTH(1-34)連日皮下投与]}は, 骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者の骨密度を有意に増加させ, 骨微細構造を改善, 再構築することにより, 結果として新規椎体骨折および非椎体骨折の発生を抑制する. 本剤の治療においては投与後早期に骨形成マーカーP1NPが上昇し, これに遅れて骨吸収マーカーの上昇がみられるanabolic windowと呼ばれる骨形成促進優位の骨代謝回転促進が特徴的である. さらには国内独自開発のテリパラチド酢酸塩[化学合成ヒトPTH(1-34)週1回皮下投与]が, 2011年11月に上市され, 臨床試験においても優れた新規椎体骨折の抑制効果が示されている. この2剤が今後適正に使用されることにより, 骨形成促進剤という新しいクラスの骨粗鬆症治療薬の有用性・安全性の評価が高まり, 骨折の危険性の高い患者さんの福音につながることが期待される.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。