一目でわかるクリニカルレシピ
神経難病の食事
掲載誌
Pharma Medica
Vol.39 No.3 80-83,
2021
著者名
砂田 芳秀
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堀尾 佳子
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井上 真実
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遠藤 陽子
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市川 和子
記事体裁
抄録
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連載
疾患領域
消化器
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アレルギー・免疫
診療科目
アレルギー科
/
消化器内科
媒体
Pharma Medica
神経難病は原因が不明で根治的な治療法がなく次第に障害が進行し、身体機能やコミュニケーション能力が著しく障害されるといわれています。主なものにパーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・脊髄小脳変性症・多発性硬化症などがあります。原因遺伝子が特定された遺伝性の病気もありますが、多くはいまだ原因不明の孤発性で、通常50歳代以降で発症し、慢性進行性の経過をとります。症状が進行して日常生活動作が困難になったり、嚥下障害や呼吸障害が進行性に悪化し寝たきりや死に至る場合もあります。パーキンソン病のように、内服治療・外科的治療で症状が改善するものもありますが、その他の疾患については症状を改善させる治療薬がないため、筋力維持や関節拘縮予防のためのリハビリテーションや抗痙攣薬などによる対症療法が行われます。嚥下障害が進行し経口摂取困難となった場合の胃瘻造設、喀痰の吸引が困難になったり、呼吸障害が進行した場合の気管切開人工呼吸器装着など深刻な選択をする必要があります。そのため介護の負担も大きく、医療依存度や看護負担も大きいため、在宅療養の継続や長期入院先の確保に困難が生じていることが問題となっています。近年、各都道府県に難病医療コーディネーターが配置され、難病医療ネットワークの構築によって、こうした状況が改善されてきています。以上のことから神経難病患者では慢性的な摂食障害からくるビタミン、ミネラルなどの欠損や運動神経・自律神経系の機能不全に伴う嚥下障害、胃食道逆流症と胃内容物の気管への流入・喀出障害による誤嚥性肺炎、脳機能障害に付随する消化機能障害、寝たきりに伴う褥瘡など栄養障害の対応が必要となってくることから、今回は主に嚥下機能低下に対する食事について紹介します。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。