特集 新型ウイルスの最新情報と対応
新たな問題となりうるコウモリ・節足動物媒介性ウイルス
掲載誌
Pharma Medica
Vol.39 No.1 43-47,
2021
著者名
梶原 将大
/
大場 靖子
/
高田 礼人
記事体裁
抄録
/
特集
疾患領域
呼吸器
/
感染症
診療科目
呼吸器内科
媒体
Pharma Medica
Key Words
新興感染症,人獣共通感染症,ウイルス,コウモリ,節足動物
感染症は時として地球規模で社会・経済を停滞させ,人々の行動や価値観に変容を強いるほどの影響力をもつ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は,公衆衛生が改善され医療が発達した現代においても,感染症が依然として人類共通の脅威であるという事実をわれわれに突きつけている。COVID-19のように,新たに見つかる病原体により引き起こされる感染症を新興感染症と呼ぶ。1940年以降に発生した300以上の新興感染症を分類すると,60%以上がヒト・動物の両方に感染する病原体による人獣共通感染症であった¹⁾。また,1980年代以降に限れば新興感染症のおよそ75%がウイルス感染症と見積もられており²⁾,今後も動物が保有する未知のウイルスによる新興感染症が出現するものと思われる。
本来,ウイルスのほとんどは特定の生物,いわゆる自然宿主の集団において,宿主に致死的な病気を起こすことなく安定して維持されている。野生動物を食料とする習慣のほか³⁾,土地開発や気候変動による地域的な生物相の変化によって,自然宿主とヒト・家畜の接触機会が増えることで,新規病原体が人間社会へ侵入しやすい環境が生み出される⁴⁾ ⁵⁾。また,世界的な人口増加や経済活動のグローバル化により,ヒト,動物,モノが活発に移動する現代社会は,風土病的に発生した新興感染症が国際的な流行に発展しやすい状況にある。本稿では,今後現れる可能性のあるウイルスとしてコウモリおよび節足動物が媒介するウイルス感染症について概説したい(図)。なお,コロナウイルスについては他稿に譲ることとする。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。