はじめに  肝臓は非常に再生能力の高い臓器であるが,肝細胞傷害が持続する状況下においては,創傷治癒反応の1つとして肝臓内にコラーゲンなどの線維が蓄積することが知られている1)2)。慢性肝炎ならびに肝硬変はこの肝線維化を病態の中心とする疾患であり,その要因はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)ならびにB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)の持続感染やアルコール,胆汁酸,脂肪酸など多岐に渡る。しかし慢性肝炎・肝硬変はその要因によらず,進展すると肝不全や肝細胞癌などの致死的な疾患につながることから,肝線維化進展抑制を目指した治療法の確立は喫緊の課題である。一方,進行した肝硬変患者は肝線維化進展の結果として高頻度に血小板減少を合併し,肝線維化stageと血小板数の間には非常に密接な負の相関関係が存在する1)2)。われわれは最近この肝線維化進展のバイオマーカーとして知られる血小板自体が抗線維化作用を有していることを同定した3)。また,in vivoにおいて血小板減少状態が肝線維化を増悪させることを明らかにし,血小板が肝線維化進展に対する新規治療標的となる可能性を見いだした3)4)。そこで本稿では,血小板の知られざる作用の1つとして肝線維化との関連について概説する。 KEY WORDS ●血小板減少 ●肝硬変 ●肝星細胞 ●コラーゲン