現代医療人の『自家薬籠中(じかやくろうちゅう)の医学書』!※本書評は「2024-2025年版」発行当時のものです
伊藤 裕
慶應義塾大学予防医療センター特任教授
本書は、気軽に手にとって、検索、書見できるボリュームと質感を保ちながら、我々医師が日常診療で遭遇する19医学領域、175疾患を網羅する意欲的な書です。 あまたある疾患に対する理解が日進月歩の進化を見せ、最新のエビデンスをもとに作られるガイドラインがアップデートされるなか、目の前の患者に最善の医療を施したいとは思うものの、果たして自分の医療がそれに見合うものか不安に駆られるのが現実です。そうした我々の医療不安を払拭し、自信を持って医療行為を行うことを、力強く後押ししてくれる良書です。
各疾患について、その概念、診断治療の方針を簡略に示したうえ、多くの疾患では、そのフローチャートが図として用意されていることで、頭を整理して診療行為に向かえるように設計されています。 処方についても、一般的、総花的な治療法の説明リストとなることは避けられ、当該疾患診療の権威である著者の経験にもとづき、私はどうしているかが、具体的に示されることで、現場で治療を選択する我々にイマジネーションと勇気を与えてくれます。 また専門医へのコンサルトの判断ポイントも記され、まさに至れり尽くせりです。 さらに、最近の話題の項目では、最新研究成果が選りすぐられて示されており、その疾患研究のエッジを見せてくれることで、どこまで進んでいるかが知れ、ある種、安心感を与えてくれます。
私は、本書が活用されるシーンを以下のように想像します。
- 1)自分の専門領域とする疾患について、その疾患に対する理解が現在的に確かであり、最新のものであるのかを確認したいと思うことは多々あります。そのような時、本書を取り出し、短時間で目を通すだけで、大きな一助になります。特に、自分の専門領域ではあるが、その中心疾患から少し外れた裾野に位置する疾患に対する理解の確認に威力を発揮します。
- 2)自分の専門外の疾患については、その病態の必要不可欠な理解と、それが自分の手に負えるかどうかの判断材料を与えてくれます。そして、その疾患について、他の専門医に紹介することになっても、自分が主治医としてその患者を診続ける場合、患者が抱えるすべての疾患の全体像を理解することに大いに役に立ちます。それは、自身の医療行為にフィードバックされ、また、自分を全体として理解してくれているという患者の安心感も生むと思います。
「自家薬籠中のもの」とは、薬籠は薬箱であり、緊急の際など、いつでも必要なときに自分の思い通りに利用できる人や物のことを示します。 まさに本書は、最新医療情報が詰まった『自家薬籠中の医学書』であると信じます。




