Vol.80
No.19 2014.11.28 発行:株式会社メディカルレビュー社
達人に学べ! 抗凝固療法のノウハウ
「新刊アイ」では、“先生のコメントから読み解く新規刊行物の魅力”をお伝えいたします。
今号では、抗凝固療法にあたる現場での不安を払拭するために作成された『抗凝固療法―達人の処方箋―』のご紹介です。
- 新刊案内『抗凝固療法―達人の処方箋―』
- 不育症 臨床編 血栓性素因
- 肺血栓塞栓症にみられる呼吸不全
- 心房細動の脳梗塞発症リスクの評価
『抗凝固療法―達人の処方箋―』
発行日 | : | 2014年11月20日 |
編 集 | : | 山下武志 (やました たけし) |
所 属 | : | 公益財団法人心臓血管研究所所長 |
ご略歴(山下先生)
1986年 東京大学医学部卒業、1994年 大阪大学医学部第二薬理学講座、1998年 東京大学医学部循環器内科助手、2000年 公益財団法人心臓血管研究所第三研究部長、2006年 同研究本部長・常務理事、2011年 同研究所長・付属病院長、2014年 現職。
山下先生に発刊に際してのコメントをいただきました。
医学・医療の長い歴史のなかで、これほど抗凝固療法に注目が集まった時代はないだろう。社会の高齢化は、高齢者に対する抗凝固療法という難しい医療を、医師により積極的に行わせようとしているかのようにみえる。そして、それをより容易くさせるために新しい複数の抗凝固薬を用意し、同時に数多くのエビデンスや疫学情報を集積させたかのようでもある。
しかし、現場には明快な解答がなされていない数多くの疑問が存在している。どれほどエビデンスや疫学情報が集積されても、疑問は永遠に残り続ける。そして、いわゆる「達人」たちもその疑問をいつも感じながら、抗凝固療法を日夜実践しているのである。さまざまな特徴をもつ心房細動患者を前に、達人たちが何を考え、どのような抗凝固療法を行っているのか、興味をもって読んでいただければ幸いである。
不育症 臨床編 血栓性素因
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.19 No.1, 31-34, 2012
藤田太輔 ほか
血栓性素因と不育症との関連は広く知られており、後天性血栓性素因である抗リン脂質抗体症候群は、流産や子宮内胎児死亡、妊娠高血圧症候群の最も重要なリスク因子です。
一方、先天性血栓性素因については、日本人では特に頻度が高いとされているプロテインS(PS)欠乏症が、不育症の原因として重要な位置を占める可能性があり、注目されています。
本稿ではそれらの関係について最近の知見に基づき概説されています。妊娠中における静脈血栓症予防に関してはガイドラインが示されていますが、不育症の発症機序、治療法に関しては確固たるエビデンスが得られておらず、プラセボを用いた大規模ランダム化比較試験による検討が待たれます。
肺血栓塞栓症にみられる呼吸不全
THE LUNG perspectives Vol.19 No.1, 38-45, 2011
藤島清太郎
肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)は、主に急性呼吸不全を呈する重篤な疾患であり、病態としてはガス交換障害と肺循環障害を認めます。
PTEの原因となる深部静脈血栓(deep venous thrombosis;DVT)の多くは下肢または骨盤に存在しますが、上肢や右心腔内で生じた血栓が原因となる場合もあり、急性呼吸不全はもちろん、慢性呼吸不全の原因にもなる可能性を有しています。
本稿では、このような急性PTEを中心にその病態と診療について概説されています。
Dダイマーの普及やCT撮影装置の進歩により、診断精度は格段に向上しましたが、見過ごされやすい疾患であることに変わりありません。適切な診断と急性期治療により、生命予後が大きく改善する可能性があるので、臨床医は見逃さないよう常に注意を払う必要があると筆者は述べています。
心房細動の脳梗塞発症リスクの評価
脳と循環 Vol.16 No.3, 29-32, 2011
八木田佳樹 ほか
非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞発症率は心房細動のない人々の2~7倍であるともいわれており、リウマチ性弁膜症を合併した場合はさらに高いリスクが見込まれます。心房細動は加齢とともに増加する傾向があり、高齢化とともにその有病率は上昇しています。これに伴い心原性脳塞栓症も増加しており、現在その原因疾患の半分以上を心房細動が占めています。
心房細動患者の心原性脳塞栓症を予防するためには、ワルファリンなどの抗凝固薬が有効です。ただし、出血性合併症のリスクがあるため、その適応決定には塞栓症リスクをCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアで層別化して適応を判断する必要があると筆者は述べています。
M-Reviewサイトアドバイザーの先生方よりご紹介いただいた注目の学会・研究会などをご紹介します。
※名前をクリックすると、M-Reviewに掲載されている先生の記事を読むことができます。
会期 | 回 | 学会名/会長 | 主会場 |
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11/28~11/29 | 38 | 日本高次脳機能障害学会学術総会 森悦朗 |
仙台 仙台国際センター |
11/28~11/29 | 27 | 日本総合病院精神医学会総会 朝田隆 |
つくば つくば国際会議場 |
11/28~11/29 | 41 | 日本臓器保存生物医学会学術集会 澤芳樹 |
豊中 千里ライフサイエンスセンター |
11/28~11/29 | 31 | 国際心臓研究学会(ISHR)日本部会 室原豊明 |
名古屋 ウインクあいち |
36 | 心筋生検研究会 室原豊明 |
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11/28~11/30 | - | 日本網膜硝子体学会総会・日本眼循環学会 合同学会 | 大阪 大阪国際会議場 |
53 | 日本網膜硝子体学会総会 池田恒彦 |
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31 | 日本眼循環学会 白木邦彦 |
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11/29 | 21 | 肺塞栓症研究会 学術集会 伊藤正明/後藤信哉 |
東京 ステーションコンファレンス東京 |
11/29~11/30 | 19 | 日本心療内科学会総会・学術大会 坪井康次 |
東京 東京国際交流館・プラザ平成 |
M-Review学会カレンダーでは、さらに多くの学会・研究会の日程をご紹介しております。 |
紅葉の綺麗な季節になりました。
葉の色が赤色に変わることを「紅葉(こうよう)」、黄色に変わることを「黄葉(こうよう、おうよう)」と呼ぶこの現象ですが、葉が何のために色づくかについては、いまだ明らかになっていません。紅葉色が鮮やかであるほどアブラムシの寄生が少ないことが発見されたことから、害虫避けとして作用している説や、光酸化障害を防ぐためという説があります。
万葉の時代から歌に詠まれてきた紅葉。秋晴れの澄んだ青空の下、紅葉狩りに興じてみるのはいかがでしょうか。
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