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投稿日時:2016/04/18(月)

M-Review Highlight
学会アイ

増刊号 2016.04.18 発行:株式会社メディカルレビュー社

5月25日は「世界甲状腺デー」

日本甲状腺学会は5月25日に制定された「世界甲状腺デー」に先駆け、甲状腺疾患の啓発や甲状腺の検査推進を目的とした活動を展開します。学会を支援する企業およびメディアを対象として、学会における活動方針説明会が3月29日におこなわれ、広報担当理事の吉村弘先生(伊藤病院内科部長)が妊娠と甲状腺機能の関連性について、また、学会理事長の赤水尚史先生(和歌山県立医科大学内科学第一講座教授)が世界甲状腺デーと甲状腺疾患・検査推進運動における学会の取り組みについてご紹介されました。

今回はその説明会の模様を特別号としてリポートいたします。

学会・研究会開催のお知らせ

甲状腺疾患啓発・検査推進運動 活動方針説明会

会 期 2016年3月29日(火)
テーマ 「世界甲状腺デー」
  ~甲状腺疾患を見逃さないために~
会 場 ホテルJALシティ田町(東京都)
甲状腺刺激ホルモンと甲状腺機能低下症
吉村弘

甲状腺疾患は橋本病やバセドウ病といった、甲状腺機能低下症や亢進症が知られているが、甲状腺ホルモンが胎児に重大な影響を及ぼすことが明らかとなってきている。甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であるとネガティブフィードバック作用から甲状腺ホルモンは機能低下状態となる。TSHの基準範囲は0.2~4.5μIU/mLで妊娠中はさらに甲状腺ホルモンの必要量が30~50%増大することが明らかとなっており、TPOAb(-)でTSHが2.5μIU/mLから基準値上限の妊娠希望者または妊娠第一期の患者に対し、米国甲状腺学会(ATA)や欧州甲状腺学会(ETA)では『治療を考えるべきである』『治療すべきである』としている。また、TSHと流産との関係性についても触れられたが、伊藤病院における妊娠初期TSH値による流産率は、TSHが高値であるほど流産の頻度が増加し、1.5μIU/mL以下であればその頻度は低下するという結果であった。

 
胎児の脳発達にサイロキシン(T4)は重要

甲状腺ホルモンは母体から胎盤バリアーを通過し胎児に移行する。甲状腺ホルモンでもサイロキシン(T4)はこの胎盤バリアーを通過するが、トリヨードサイロニン(T3)はわずかに通過する程度でTSHは胎盤を通過しない。吉村氏は、「胎児甲状腺が未完成の妊娠初期の胎児発育分化は母体のT4に依存している」と強調する。胎児は卵子の段階から出産に至るまで母親由来のT4の影響を受けるが、その一方で12週頃から胎児自ら甲状腺ホルモンを産生し始める。しかし、大脳皮質は妊娠11週から23週までに形成されるため、この時期の母体からのT4は特に重要であるという。
なお、妊娠時の顕性甲状腺機能低下症の母児への影響として、母体に対しては高血圧、子癇前症、胎盤早期剥離、流産率の増加、帝王切開の増加、そのほかに産後出血が多くみられ、胎児に対する合併症には早期産、低体重、周産期罹患率の増加、胎児の周産期死亡率の増加に加え、神経精神発達や認知機能障害が生じる。

 
「世界甲状腺デー」の歴史
赤水尚史

「世界甲状腺デー(World Thyroid Day)」の制定は2007年9月に開催されたETAで決定された。5月25日となった背景はスカンジナビア半島の国々で「国家甲状腺デー」として1965年にすでに制定されていたことと、ETAの創立記念日であったことに起因する。そして、2008年5月25日に第1回世界甲状腺デーが「欧州甲状腺デー」としてスタート、2010年にはATAが正式に加入し、続いてアジア・オセアニア、ラテンアメリカの甲状腺学会も加入した。
日本甲状腺学会はアジア・オセアニア甲状腺学会に加盟しており、現在、世界の甲状腺学会は4つの地域で活動を展開している。そして、世界甲状腺デーは、①甲状腺疾患の意識向上、②甲状腺疾患治療の理解向上、③甲状腺疾患の高い有病率を強調、④甲状腺疾患の予防と教育の必要性にフォーカス、⑤新しい治療の普及に努める、といった5つの目的がある。また、5月25日を挟んだ1週間を「世界甲状腺ウィーク」に制定し、この期間、特に甲状腺疾患やその治療について啓発を進める。毎年テーマを決定するのが特徴だが、2016年は「子供」をテーマに活動を展開する。

 
罹患者数は多いが、認知度の低い甲状腺疾患

甲状腺疾患の有病数は世界で3億人、わが国でも700~1,000万人といわれている。日本人の成人における甲状腺疾患の頻度として、1cm以上の結節を有する患者は15~20人に1人、橋本病は成人女性の20~30人に1人、甲状腺中毒症/機能亢進症は200~300人に1人で、実際に治療が必要な甲状腺疾患の患者数は200~300万人ともいわれる。しかし、この事実はさほど認知されていないのが現状である。
甲状腺疾患の診断には機能的検査(ホルモン濃度の測定、甲状腺機能調節機序、ホルモンの末梢作用)、病因的検査(甲状腺自己抗体、遺伝検査)や形態的検査(画像、病理検査)がある。また、治療法として機能低下症では甲状腺ホルモン補充療法、機能亢進症では抗甲状腺薬や外科治療、放射線治療があり、腫瘍性疾患には外科治療、放射線治療がある。最近では薬物治療として分子標的薬も使用可能となり、治療の幅も広くなりつつある。

 
日本甲状腺学会の取り組み
世界甲状腺デーポスター

日本甲状腺学会は、こうした甲状腺学の進歩・向上を図る目的として1958年に発足。対象は内科医、外科医、放射線科医、小児科医など多様である。
主な活動は、①学術集会の開催、②(アジア、オセアニアといった各国との)国際交流の促進、③研究者および優れた臨床医師の育成、④診療ガイドラインの作成を行う。学会会員にはニュースレターの配信、そのほか、一般医や研修医等に対する啓蒙サイト「バーチャル臨床甲状腺カレッジ」を構築している。改訂版ではスマートフォンでも閲覧できるようになるという。
2004年からは専門医制度を導入し、甲状腺専門医の育成に取り組んでいるが、いまだ専門医が1人もいない県もあり、「専門医偏在に対する問題を解決しなくてはいけない。」と赤水氏は続ける。
世界甲状腺デーに先駆け、学会はシンボルマークのバタフライリボンとそのバッジを作成(なお、バタフライリボンは学会の許可申請書にて使用することが可能)。ポスター、「5月25日は世界甲状腺デー」も作成し、日本各地の医療施設に配布する。5月21日には東京で市民公開講座が開かれ、その後援も行うという。
世界からみても甲状腺疾患の多い日本において、こうした啓発活動は急務であるといえる。

学会カレンダー

甲状腺領域の関連学会をご紹介します。

会期 学会名 主会場
9/3~9/6 39 欧州甲状腺学会議(ETA2016) コペンハーゲン
(デンマーク)
9/21~9/25 86 米国甲状腺学会議(ATA2016) デンバー
(米国)
11/3~11/5 59 日本甲状腺学会学術集会(JTA2016) 虎ノ門ヒルズフォーラム
(東京)
2017年
3/16~3/19
12 アジア・オセアニア甲状腺学会議(AOTA2017) 釜山
(韓国)
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