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Theme 新しいがん治療のState of the Art News and Topics【What's New】

腎細胞がんにおける腎摘除後の術後補助療法としてのペムブロリズマブ

髙見澤重賢内野慶太

がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 138-140, 2022

腎細胞がん患者は近年本邦において増加傾向であり,最も多い組織型は淡明細胞型腎細胞がんである。腎部分切除術または根治的腎切除術が標準的な治療法であるが,局所進行(T2~T4)の腎細胞がん患者の35~47%は術後に再発を認める1)
転移性腎がんに対する薬物療法に関しては多くの有効なエビデンスが示されている一方で,再発予防のための術後補助薬物療法としての有効性は明らかではない。腎細胞がんに対する最新の治療ガイドラインである「腎癌診療ガイドライン2017年版」においても,術後再発予防のための補助薬物療法に対しては「推奨されない」(推奨グレード:C2)とされており,標準治療が存在しない。腎細胞がんの世界的な発生率の増加に伴い,効果的な術後補助療法の開発が求められていた。
術後補助療法としてサイトカイン療法の開発が進められたが,IFN-αは生存率の改善を認めず2),IL-2も予後の改善は認めなかった3)
術後補助療法としての分子標的薬の開発も進められてきた。ASSURE試験ではスニチニブとソラフェニブをプラセボと比較したが,無再発生存期間,全生存期間(OS)ともに有意差を認めなかった4)。S-TRAC試験では,スニチニブはプラセボと比較して無病生存期間(DFS)の延長を認めたが,OSは有意差を認めなかった5)。SORCE試験では,ソラフェニブとプラセボを比較し,DFSおよびOSに有意差を認めなかった6)。PROTECT試験では,パゾパニブはプラセボと比較して,DFSに有意差を認めなかった7)。ATLAS試験ではアキシチニブとプラセボを比較したが,DFSに有意差を認めなかった8)。これらの薬剤は,血管新生に関与するVEGF受容体や腫瘍増殖に関与するPDGF受容体など複数の受容体を標的にする低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。転移性腎がんへの有効性を示したため,術後再発予防を目的に術後補助療法への適応が試みられたが9),予後延長効果を示せず,有害事象の懸念もあるため現在までのところ推奨されていない。手術後の腫瘍環境は,進行がんである転移性腎がんとは異なるため,期待された抗腫瘍効果が発揮できなかったことが予想される。
現在,国内で承認されている術後補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬は,食道がんおよび尿路上皮がんに対するニボルマブがある。一方,ペムブロリズマブは進行腎細胞がん患者において,単剤および他剤との併用で効果を示したため,術後補助療法としての可能性が期待された。最近発表されたKEYNOTE-564試験について紹介する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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