Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 State of the art reviews and future perspectives
がん間質ターゲティング療法
がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 22-25, 2022
抗体医薬は,分子標的薬に分類されてきたが,最近は,抗体工学の発展に伴い,抗体−薬物複合体(ADC),CAR-T,bispecific抗体など,殺細胞効果を増強させる剤形が開発されてきている。これらの剤形は,増殖シグナルのような正常幹細胞の分裂と共有する経路を阻害する抗体では毒性をも増強させるので,単にがん特異性が高い分子に対する抗体が目的に適っていると考える。一方で,抗体療法における障壁も明らかになってきている。抗体医薬の耐性は,腫瘍細胞の抗原発現のheterogeneityの問題,エフェクター細胞におけるFcRの多様性や多型に起因する抗腫瘍免疫の低下の問題など,さまざまな機構が知られており,それぞれの対策が検討されている。さらに,標的の腫瘍細胞が血管内に存在する血液系腫瘍と異なり,固形がんはがん組織中にがん間質が存在し,抗体医薬のデリバリーを妨げる。本論では,がん間質の成因とがん間質バリアを克服するがん間質ターゲティング(CAST)療法を中心に考察する。
「KEY WORDS」抗体−薬物複合体(ADC),EPR効果,がん間質ターゲティング(CAST)療法,血液凝固,不溶性フィブリン
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