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悪性リンパ腫に対するCAR-T療法
がん分子標的治療 Vol.16 No.3, 88-90, 2018
CD19は,主にB細胞に発現する膜貫通型蛋白質で,正常B細胞に加え,多発性骨髄腫を除くB細胞性非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma;NHL)・急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia;ALL)・慢性リンパ性白血病などの多くのB細胞性腫瘍でその発現を認める。一方,造血幹細胞や造血器以外の臓器での発現がないことより,良い治療標的と考えられている。
このCD19を標的とした,新しい養子免疫療法のアプローチとして,遺伝子改変T細胞である抗CD19キメラ抗原受容体発現T細胞(chimeric antigen receptor-T-cell;CAR-T)の開発が近年大きく進み,臨床現場におけるその期待はきわめて高い。CD19-CAR-Tは,CD19を特異的に認識するモノクローナル抗体の可変領域の一本鎖抗体(single chain variable fragment;scFv)とCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを連結させたCAR遺伝子を,患者末梢血から採取したT細胞に,主にウイルスベクター(レンチウイルスやレトロウイルス)によって導入する。CD19を発現する腫瘍細胞をCAR-Tが特異的に認識することでT細胞が活性化し,腫瘍細胞を直接傷害する。現在は,CD3ζの上流に,共シグナル刺激分子のCD28や4-1BBを加えた第2・3世代CAR-T,さらにサイトカイン分子によりT細胞の活性化シグナルを増強しうるように設計された第4世代CAR-Tの開発が進んでいる。なかでも,共シグナル刺激分子のCD28ないし4-1BBを加えた第2世代CAR-Tが臨床開発の主流である1)2)。
本稿では,近年開発著しいCD19-CAR-Tの悪性リンパ腫に対する最近の動向を概説する。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。