Pharmacogenomics and biomarker
ウイルス陽性がんに対する免疫チェックポイント阻害薬
がん分子標的治療 Vol.15 No.2, 88-93, 2017
慢性ウイルス感染下では,ウイルス特異的なCD8陽性T細胞はしばしば疲弊状態(exhaustion)に陥っており,ウイルスの持続感染や発がんに関与している。このようなCD8陽性T細胞は,細胞傷害機能を保持しているT細胞とは異なる遺伝子発現プロファイルを有することが知られており,PD-1,LAG-3,TIM-3,TIGITなどの抑制性受容体が細胞表面上に過剰発現している。一方腫瘍側では,ウイルス遺伝子がPD-L1に組み込まれることによってPD-L1 mRNAの転写が活性化し,PD-L1が高発現していることも報告されている。これらの免疫チェックポイント分子を標的とすることによって,CD8陽性T細胞のもつ本来の抗腫瘍効果を回復させる治療は有望であると考えられる。現在,ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性頭頸部扁平上皮がん,エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)陽性上咽頭がん,子宮頸がん(HPV 感染),EBV陽性胃がん,B型肝炎ウイルス(HBV)/C型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝細胞がん(HCC),Merkel cell carcinomaなどを対象に,免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発が進行中である。
「KEY WORDS」免疫逃避,PD-1,HPV,EBV,T細胞の疲弊,免疫抑制性分子
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。