特集 アルコール依存症の治療ターゲット
4.専門医療機関における治療ターゲットの考え方 ―古典や格言に習う断酒と減酒,治療目標―
Frontiers in Alcoholism Vol.7 No.2, 24-28, 2019
アルコール依存症(使用障害)の専門医療機関での治療の対象者は多岐にわたる。近年は偏見低減のためか,早期の受診が増えている印象がある。さらに,年齢層や状態像においても,幅広い層が受診している。2018年発行の「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」(以下,新ガイドライン)1)には,アルコール依存症の治療方針が断酒だけにとどまらず,減酒も選択肢になることが示された。つまり,身体合併症が軽症な人だけではなく,治療を中断するリスクがある場合にも,個人や家族の状況も考慮して,治療選択を行っている。
断酒か減酒という二分法のみに囚われるのではなく,その方針が目的ではなく手段であることを念頭に入れ,できるだけその人の幸福や生活が楽になることを目指すことが望ましい。何がベストな方法かは,スポーツで「どうすれば絶対勝てるか」という命題に類似し,そのような秘技はない。だからこそ個々に応じたよりベターな方策を総動員して,治療者は悩み続けるしかないのである。
「KEY WORDS」アルコール依存症,断酒,減酒,ハームリダクション
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。