特集 女性と乳腺疾患
1 乳がん検診
WHITE Vol.6 No.1, 9-14, 2018
日本女性は乳がんには罹りにくいと考えられていたが,1980年代以降急激に増加し,1990年代後半には胃がんを抜いて罹患率トップとなった.現在乳がんは年間約9万人が発症し,11人に1人の日本女性が生涯で1回は経験するという,他人事とは言えない疾患となった.
しかし乳がんには触診,マンモグラフィ,エコーなど簡単な検査で容易に発見でき,早期に発見すれば根治する可能性が高いという特徴があるので,乳がんは検診の意義が大きい疾患といえる.欧米諸外国はこの検診をうまく利用して死亡率を減少に転じてきたが,わが国ではまだ乳がん死亡率が増加し続けている.今後,わが国の乳がん死亡率を減少させるためには医療者が精度の高い検診を行うことと,国民が積極的に検診を受診することの両方が必要である.本稿では,わが国の乳がん検診の歴史と現状を述べ,そこから見えてきた問題点を検討し,今後どのようにしていけばよいかを考察したい.
ただし,気を付けなければならないのはわが国の乳がん検診には対策型検診と任意型検診の2種類があり,これらは目的も方法も異なっており,分けて考える必要がある.混乱しないように検診の種類による違いについてまず述べておこう.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。