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病診・院内他科連携の実際

富山県立中央病院における地域ぐるみのチーム医療で目指す循環型医療連携

臼田里香

Diabetes Horizons ―Practice and Progress― Vol.3 No.1, 36-42, 2014

富山県内唯一の県立総合病院である富山県立中央病院は,20診療科を擁する基幹・中核病院であり,日本糖尿病学会認定の教育施設である。同院では,多職種による院内のチーム医療をかかりつけ医との連携により地域ぐるみのチーム医療に発展させ,「国際モダンホスピタルショウ2010」でも大きく紹介されるなど高い評価を得ている。今回は約25年にわたり同院で糖尿病の教育入院パスや病診連携および院内他科連携体制を築き,一貫して地域医療の質の向上に貢献してこられた臼田里香先生にお話をうかがった。

早期の教育入院による糖毒性軽減とチームによる生活指導が治療の基本

―富山県立中央病院における糖尿病の治療方針を教えてください。
 私たちは以前から,病歴の長い糖尿病患者さんであってもチームで関わる生活指導と短期インスリン投与等による糖毒性軽減により,病態の安定を目指し,その上で薬物を適正に使用することを心掛けてきました。糖尿病治療の目的は,「健康人と変わらない日常生活の質と寿命の確保」であり,決して血糖コントロールだけが目的ではありません。一方で,食事療法や運動療法,衛生などの自己管理を患者さんが継続していくことは簡単ではなく,可能な限り早い段階で教育入院をしていただき糖尿病専門スタッフから適切な指導を受けることが重要です。
 糖尿病専門病棟では,看護師,栄養士,薬剤師,臨床検査技師,歯科衛生士,理学療法士,助産師など多くの職種が関わりながら,10日間の糖尿病教育入院を実施しており年間約400例の実績があります。教育入院の期間はもともと3週間でしたが,チーム医療による効率化や電子カルテの稼働,DPC導入により現在,10日間の「DPC糖尿病教育入院パス」となりました。一方で個別性を重視し,「肥満者用」「外食者用」「節煙・禁煙者用」「インスリンポンプCSII導入用」などのアドオンパスを併用して指導することにより,日数が短縮しても以前と同等の有効性を維持しています。また,通常の教育入院以外にも,独身男性への指導体制作り,高齢患者を対象に家族指導も行う「糖尿病シニア教育入院パス」,さらに「妊娠糖尿病教育入院パス」,「糖尿病腎症教育入院パス」なども運用しています。いずれにしても,患者さんご自身が主体性を持ち,治療に関わる多くのスタッフとの共同作業で健康長寿を目指すことが治療の方針です。

循環型医療連携を目指すオールインワンシステムを構築

―病診連携についてはどのような連携体制を築いておられるのでしょうか。
 一般的には,患者さんの血糖コントロールが不良になって病院に紹介されてくるという病診連携が多いかもしれません。当院でも,高齢の患者さんに対するSU薬投与による糖尿病昏睡の救急搬送,教育入院後に血糖コントロール不良のまま長期間の放置を経て紹介されるケース,慢性合併症が進行したケースなど多くの問題を目の当たりにしてきました。心血管イベントや重症感染症などで救急搬送されるケースも日常的になってきています。これには,当院側の体制の問題や地域における患者指導の問題,患者自身の社会的・心理的問題など様々な要因が絡んでいると思います。現状,打開策の1つとしてわれわれは糖尿病の診断時より「病」と「診」の連携を活用していくことが重要であると考え,重症化や治療中断を防ぐために病診連携体制を目指してきました。コンセプトは「地域ぐるみの糖尿病チーム医療」です。具体的には,病院で糖毒性の軽減と患者教育を行い,病態や合併症を精査したうえで適切な薬物療法を検討して,地域のクリニックに逆紹介するという「オールインワンシステム」を提唱してきました。

―オールインワンシステムとはどのようなものですか。
 オールインワンシステムとは,初診時,教育入院前,入院中,退院後初回,転院前,年1回のフォローアップ時に当院の糖尿病チームが強力に介入し,血糖コントロールが悪化しない体制を整備するというものです(図1)。

特に「生活習慣病指導室」では糖尿病療養指導士(CDEJ)が在宅療養指導を提供していますが,院内・院外連携のキーステーションとしての機能も併せ持っています。教育入院と通院によりHbA1c値7.0%程度に血糖コントロールが安定し,自己管理の継続が十分可能と判断された段階でかかりつけ医に逆紹介するようにしています。その後は年1回のペースで定期的に紹介受診していただき,フォローアップ入院や短期外来チェックコースを受けていただきます。フォローアップ入院とは,3泊4日程度の入院で自己管理方法の見直しや薬物療法の再調整,糖尿病合併症の精密検査などを行うものです。フォローアップ入院が難しい方には,短期外来チェックコースで2週間ごと計4回の外来受診により合併症の精査や疾患学習を行います(図2)。

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