今日から使える! 接遇マナー講座
第2回 医療接遇実践編
DIABETES UPDATE Vol.8 No.2, 44-46, 2019
今回,病院における接遇を「患者やそのご家族はもとより,チーム医療として職員間や関係各所との信頼関係を構築するために重要なコミュニケーションスキル」として捉え,結果として接遇の良さが診療の質を高めることにつながるということを定義としています。
また,病院における接遇を考えるとき,単にホスピテリティーを医療接遇とするのではなく,マナー,サービス,ホスピタリティーという段階を経て成り立つのが病院における接遇ではないかと考えます。
例えば,このような事例で皆さんはどのように感じますか?
「今度の先生は,顔を見ずにパソコンばかり見ていて,『問題ないですね』と一言。前の先生と同じ薬を出した。前の先生に変えてください」という患者からの苦情です。
皆さんはこの苦情に対してどのように感じますか?また,この医師にこの事実をどのように伝えますか?
まずこの医師は,パソコンで数値や前の医師による患者の診療記録のデータを確認した結果,最適な対応と判断をして前回と同じ薬の提供をしたのでしょう。しかし患者は不満なのです。
問題点の1つには,顔も見ずに「問題ないですね」という一言で済ませてしまっている点があります。医師にとってはわかりきっていることでも,患者側には何が「問題ない」のかがわからないため不安となり,説明不足と認識して不満を感じます。
また,待ち時間も長く,やっと診てもらえると思ったら,顔も見てもらえず「誰に話をしているのか? 本当に私のことなのか?」と,悲しくなっているのです。頼りにしているからこそ,より冷たくされたように感じ不満は大きくなるものです。
そして何より医師として,患者本人から得る情報は重要であり,患者から信頼を得たうえで診療に当たるという大切な役割があるという基本的なところを振り返らなければならない事例といえるでしょう。
このことからも,患者との対応には,医療者としての技術力やホスピタリティーマインドだけでは足りないということがいえます。患者とどのように向き合っているかを体現することです。病院における接遇は,ホスピタリティーだけでなく,土台となるマナーやサービスの部分で誤解を与えないために重要だということが再確認できるのではないでしょうか。
そして接遇には2つの側面があり,1つ目は「おもてなしの心を表現し感謝・感動・満足へ繋げる」ということ。そして2つ目は「誤解を与えないようにする」ことと,「安全面も含めてリスクを回避する」という重要な側面がある点も忘れてはならないところです。
では,接遇に関する2つの側面(おもてなしとリスク管理)から下記の事例を考えてみましょう。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。