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Meeting Report

第55回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)

古瀬純司

The Liver Cancer Journal Vol.11 No.2, 55-58, 2019

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は,癌治療に関する国際学会として最も注目されている学術集会である。今年も2019年5月31日から6月4日まで,例年通り米国シカゴで開催された。例年数万人規模の医師,研究者などが参加するが,今年は例年以上に参加者が多かったのではと思えるほどの混み方で,朝のメイン通路はさながらラッシュアワーの新宿駅であった(写真1)。シカゴはこの季節,まだ朝夕は少し肌寒い気候で,今年は特に夜に外を歩く際にはセーターなど厚着が必要だった。また会場は例年通り,空調の効き過ぎで寒いくらいである。2日目に土砂降りの夕立があったが,その他はほぼよい天気で,会場からミシガン湖をきれいに眺めることができた(写真2)。
今年はプレナリーセッションに,germline BRCA遺伝子変異陽性膵癌に対するオラパリブの第Ⅲ相試験(POLO試験)の結果が発表され,膵癌では初めて治療に関連する遺伝子のエビデンスが報告された。その他,膵癌術後補助療法としてゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の第Ⅲ相試験(APACT試験),胆道癌に対する二次治療のFOLFOXの第Ⅲ相試験(ABC-06試験)など,膵癌・胆道癌で注目される臨床試験の報告がいつになく多かった印象がある。
肝細胞癌に関連した演題は,Oral abstract 2題,Poster discussion 1題,Poster session(Poster discussionを除く)14題(内2題は進行中の臨床試験の紹介)であった。これらのなかで,日本から切除手術とラジオ波焼灼療法(RFA)の第Ⅲ相試験(SURF試験)が報告され,ペムブロリズマブの第Ⅲ相試験(KEYNOTE-240試験),ニボルマブ+イピリムマブ併用,およびアベルマブ+アキシチニブ併用の臨床試験など,免疫チェックポイント阻害薬関連の発表に注目が集まっていたように思われる。本稿では,これらの4演題(表1)に絞って発表の概要を紹介する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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