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呼吸器内科に聞く!見逃せない病態と対処法

間質性肺炎(乳癌治療との関係から)

齋藤好信弦間昭彦

CANCER BOARD 乳癌 Vol.5 No.2, 62-65, 2012

乳癌治療における間質性肺炎
 癌治療における間質性肺炎といえば,薬剤性肺障害としての間質性肺炎が真っ先に思い浮かぶ。薬剤性肺障害とは,薬剤によって誘発される種々の呼吸器病変であり,大きく分けて,①肺胞・間質領域の病変,②気道病変,③血管病変,④胸膜病変に分類される 1)。このなかで最も頻度が高く,臨床的に重要な病変は,間質領域の病変すなわち間質性肺炎である。薬剤による間質性肺炎の病態については,一般的に細胞障害性機序または免疫系細胞の活性化が関与すると考えられている 1)。抗癌剤は細胞毒性があるため,前者の機序が大きく関与することが推測されるが,実際には機序が詳細に解明されている薬剤はほとんどない。
 また,乳癌治療は放射線治療が行われる機会も多い。放射線治療に関連した間質性肺炎としては,放射線肺炎と放射線照射後の器質化肺炎(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia:BOOP症候群)が知られており,乳癌治療に伴う間質性肺炎の病態は多様である。
 以下に,薬剤性間質性肺炎の診断とマネジメントについて解説し,薬剤性間質性肺炎および放射線治療後の器質化肺炎について具体例を提示する。

診断とマネジメントの実際

 薬剤性間質性肺炎の診断は,必ずしも容易ではない。なぜならば疾患特異的なマーカーがないからである。類似する病像を呈する疾患があるため,鑑別診断をしっかり行って診断する必要がある。具体的には,呼吸器感染症,うっ血性心不全,癌性リンパ管症などの癌病変の悪化が主なものであるが,特に呼吸器感染症は鑑別すべき重要な疾患である。癌患者はコンプロマイズド・ホストであり,抗癌剤などの治療薬に起因する免疫能低下が著しい場合には,ニューモシスチス肺炎などの日和見感染症を発症するリスクがある。ニューモシスチス肺炎の胸部画像所見は間質性肺炎との鑑別が簡単ではない。正確に診断するためには,画像検査のほかにもさまざまな検査を実施しておくことが鑑別するうえで有用である。薬剤性肺障害の診断フローチャートを示す(図1)。

 薬剤性間質性肺炎を疑った場合,胸部X線検査,胸部CT(可能であればHRCT),KL-6やSP-Dなどの間質性肺炎マーカーを含めた血液検査を初期対応として実施しておき,なるべく早い段階で呼吸器専門医へコンサルトすることが望ましい。
 治療に関しては,薬剤性間質性肺炎が疑われた時点で抗癌剤の投与を中止することが原則である。中止のみで軽快する場合もあるが,一般的にステロイドを投与される場合が多く,プレドニゾロン0.5~1.0mg/kgが投与量の目安とされる。重症度が高い場合にはメチルプレドニゾロン0.5~1g/日×3日間などのステロイドパルス療法も行われる。
 予後については,びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)のパターンを呈する間質性肺炎では,多くの場合ステロイドに対する治療反応性が悪く,予後不良である。重症かつステロイドが無効である場合の治療方法について確立されたものはないが,状況に応じて人工呼吸管理が必要となる場合もあり,また,薬物療法としてはシクロホスファミドなどの免疫抑制剤を併用する方法など,特発性肺線維症の急性増悪に準じた治療が行われることもある。
 過去に薬剤性間質性肺炎が問題となった薬剤の事例がいくつかある。そのなかで,ゲフィチニブの間質性肺炎・急性肺障害の問題は,大規模な疫学研究 2)を実施するに至り,結果として薬剤性間質性肺炎の頻度や予後のみならず,危険因子についての情報も明確にされた。この研究では,肺癌を対象にゲフィチニブだけではなく,分子標的治療薬以外の抗癌剤も含めた抗悪性腫瘍薬による間質性肺炎の危険因子として,①65歳以上,②喫煙,③既存の間質性肺炎あり,④正常肺占有率が50%未満(治療前のCT画像から検討),⑤呼吸性移動制限領域50%以上(治療前のCT画像から検討)が特定されている。薬剤性間質性肺炎を予防する方策はないが,少なくとも既存の肺病変,特に間質性肺炎の存在には十分注意する必要がある。乳癌治療の開始前に,既存の肺病変について評価を行い,抗癌剤の適応について安全性の面からも検討しておきたい。例えば,乳癌に適応を有する抗癌剤のうち,イリノテカンは「間質性肺炎または肺線維症の患者」,ゲムシタビンは「胸部単純X線写真で明らかで,かつ臨床症状のある間質性肺炎又は肺線維症のある患者」には禁忌とされている。

薬剤性間質性肺炎の具体例

 実際に経験した薬剤性間質性肺炎の症例を提示する。症例は非小細胞肺癌患者であるが,乳癌の化学療法でも使用されるドセタキセルによる薬剤性間質性肺炎と診断した症例である。化学療法前のCTでは肺気腫を認めるのみであった(図2-A)。

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