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大腸癌の分子生物学

核小体ストレス経路を介したp53制御遺伝子PICT1遺伝子の機能~特に大腸癌について~

古後龍之介三森功士小宗静男鈴木聡森正樹

大腸癌FRONTIER Vol.5 No.2, 85-89, 2012

「Summary」核小体は核内に存在する細胞内小器官であり, リボソーム合成の場として知られているが, 近年ストレスに対する細胞応答にかかわる器官であることがわかってきた. 核小体にストレスが加わると, 核小体に存在するRPL11等の特定のリボソームタンパク質は核小体から核質に移動する. 核質へ移動したリボソームタンパク質は癌抑制遺伝子p53の分解を導くMDM2の機能を低下させ, p53タンパク質の分解を防いでいる. PICT1は核小体に存在し, リボソームタンパク質RPL11を核小体に保持している. PICT1の減少はRPL11の核質への移動を促し, p53タンパク質を蓄積させ, 細胞周期の停止や細胞死を誘導する. 実際の大腸癌検体においてもPICT1発現の低下した症例では予後が良好であった. PICT1はRPL11を核小体に保持する重要な遺伝子であり, 大腸癌患者の有用な予後マーカーとなりうる.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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