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特集 膵がんの予防について考える

巻頭言

浅香正博

THE GI FOREFRONT Vol.9 No.1, 11, 2013

膵がんは予後がきわめて悪いがんである. その理由の1つが早期診断の困難さである. 2007年の膵がん罹患者数は29,025名であり, 2011年の膵がん死亡者数は28,829名とほとんど変わらない. 罹患者と死亡者がほぼ同数というのは診断がついた時点でほとんどが助からないことを意味している. これだけ極端な数値が出てくるがんは膵がんしかないのにもかかわらず, 膵がん予防の対策は全くなされていない. がんの予防には一次と二次があり, 原因のはっきりしないがんについては二次予防としての検診が行われているが, 膵がんの場合は, 原因が明らかでないだけでなく, 診断が困難なため検診を行うこともできないという悲惨な状況下にある. 今回の特集では, これまでどの雑誌にも特集されたことのない膵がんの予防について考えてみた. 二次予防は困難であるので, 一次予防のみの検討である. 最初に膵がんの基礎研究を長年にわたって行ってきた小林先生から膵がんの原因についての研究の進歩について総説的に記載してもらった. 最新の膵がん予防についての必須事項がコンパクトにまとめられており, これを最初に熟読してから各論に移行していただきたい. 丹藤先生からは糖尿病との関わり, 清水先生からは慢性膵炎との関わり, 真口先生からはIPMNとの関わり, 玉腰先生からは喫煙との関わり, 津金先生からは食事との関わりについて述べられているが, 小林先生の総説を傍らに置きながら読み進むと理解がより深まると思われる. 喫煙, 糖尿病, 遺伝, 膵炎の既往など膵がんの発生原因と関わりのある因子が同定され始めている. また基礎研究では, 膵がん進展モデルにおいて膵がんの前がん病変と考えられる膵上皮内腫瘍性病変が同定され, さらなる飛躍が期待されるようになってきた. 臨床では, 膵がんの診断治療に全力を挙げているが, 遅々として進んでいない. しかし, 原因が同定され, それが一次予防に結びつくなら膵がんで亡くなる人を大幅に減少させる可能性がある. まだ夢のような話であるが, 膵がん予防の方面での若手研究者の奮起を促したい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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