特集 わが国から胃癌を撲滅するための新しい試み―第17回JAPANGAST Study Groupハイライト―
巻頭言
THE GI FOREFRONT Vol.8 No.2, 11-11, 2012
今年のJAPANGAST Study Group(JGSG)の会場はいつもより熱気を含んでいた. H.pylori除菌の保険適用が慢性胃炎にまで拡大される日が近づいてきたからであろう. 日本ヘリコバクター学会のガイドラインにすべてのH.pylori感染症を除菌すべきであると記載されてからほぼ3年でその通りに実現可能となったのだから, 気分が多少高揚するのはやむを得ないことかもしれない. ましてや, そのきっかけを作ったのが, JGSGによる臨床試験であることは疑いの余地はないのである. このような重要事項が厚生労働省や医薬品メーカー主導で行われたのではなく, JGSGという任意団体によってなされたということはわが国の臨床試験の歴史に永遠に刻み込まれる画期的な出来事と思われる. 京都大学の武藤誠先生の大腸癌のマウスモデルについての特別講演はその研究の迫力に圧倒されるとともに常に臨床を意識されて研究に従事されている姿勢にも感銘を受けた. 今回のワークショップは, 従来とは全く異なる切り口で迫ってみた. 若年者に対して実際に除菌療法を行っている赤松先生からは高校生, 堀内先生からは成人式を迎えた方々への除菌成績が発表された. 将来, わが国から胃の病気を無くしてしまう重要な政策になると思われる. 公明党参議院議員の秋野先生から日本政府のH.pyloriと胃癌の関わりについての見解や胃癌対策基本計画をいかに変更させたかについて詳しく報告されたが, 医師であり厚生労働省の医系技官でもあった経験を活かして国民のための政策を打ち出してくれた意義は大きい. 北海道大学病院の顧問弁護士の斎藤先生からは胃癌に関する裁判について実例を挙げて詳しい説明があり, インフォームドコンセントの重要性を身にしみて感じた方が多かったと思われる. このように従来ほとんど議論されたことのないテーマについて素晴らしい講演を行っていただき, 活発な議論をいただいた. この特集は会に参加されなかった方々にも大きなインパクトを与え, 保険適用以後にも十分活用できるものであることを期待している.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。