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巻頭言

Frank Madeo先生へのインタビュー

An interview with Dr. Frank Madeo

坪田一男

アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.3, 4-9, 2011

Introduction
 マデオ先生とは2010年のエイジングに関するゴードンカンファレンスで初めてお会いした。彼はNature Cellbiologyにスペルミジンの長寿効果について論文を出して一躍有名になった。Gordon ConferenceやKeyStone Symposiumなどのよいところは,論文を読んで感動した先生方と直接ディスカッションができることだ。マデオ先生もその一人。なにしろ,日本人にとって大切な食べ物である“納豆”の中に多量に含まれるフードファクターであるスペルミジンがアンチエイジングによいというのだから,こんなに魅力的なストーリーはない。今までも納豆はよく食べていたが,今ではさらに食べるようになってしまった! マデオ先生のおかげである。
(坪田 一男)

Kazuo Tsubota(KT) 今日はお時間をいただき,ありがとうございました。先生は,スイスで開催されたエイジングのバイオロジーのゴードンカンファレンスで,細胞死とエイジングに関するセッションで“壊死を抑制することが長寿を促進する”という講演をされました。納豆に含まれる非常に重要な成分であるスペルミジンについてお話をされて驚いたのですが,これが寿命を延ばすということでした。この研究についてご説明願えますか?
Frank Madeo(FM) 私たちがしたことは偶然だったのですが,スペルミジンを高齢の酵母の培養に置いたところ,私たちが研究していたものとは全く関係ない別の面白い発見があったのです。
KT それが偶然の瞬間だったんですね!
FM そうなんです。科学的なアクシデントというものを私は信じています。本当の発見は,自分が想像していたものよりもずっと大きなものから生まれるものだと思うのです。私たちは,酵母で寿命がとても長くなることを発見しました。そのとき,なぜかとても心が惹かれ,どうして男性の精子にスペルミジンが多く含まれるのかを考えるようになったのです。精子では時計がゼロにセットされているので,そのまわりは永遠の若い泉になるのかもしれない,ということは理解できますよね。そこで,線虫やハエなどといった他の生物でも,この効果を検証することを始めたのです。マウスでもある程度は調べ,ヒトではex vivoをドナーから貰って免疫細胞を調べました。どの場合でもよく寿命が延びたのです。そこで,私たちは老齢の酵母の中のスペルミジンを測ることを始めたところ,年をとるにつれて細胞内のスペルミジン濃度が減少するということで,これが加齢の阻害因子になるのではないか,ということでした。また,ヒトにおいても,年をとるとスペルミジンの濃度が減少するのです。
KT すべての細胞にスペルミジンがあるのですか?
FM はい。すべてにあるのです。すべての細胞に,いうなれば,すべての生物にです。
KT スペルミジンの量は加齢とともに減少する,それならば,それを外から摂取しようという考えができると思います。
FM はい。年をとると,精子の濃度が減少するだけではなく,オートファジーという細胞内や,生物の自己洗浄作用を誘発する能力も失われるのです。スペルミジンは実際にオートファジーを引き起こすのですが,そのときにオートファジーは多くのモデルで寿命の延長と関わることが明らかになってきました。そこで考えたのが,年をとった体はスペルミジンがないために,オートファジーを誘発することができないと考えられるかもしれないということです。スペルミンジンを外から投与することで,これを克服できるのではないかと。でも,あまり濃度が濃い場合にはひどい副作用があるかもしれないので,スペルミジンを単に飲むことには注意するようにしました。
KT 今のところ,ラパマイシンはとても関心を呼んでいます。なぜなら,mTORの発現が長寿に非常に重要であるためで,その主なメカニズムはオートファジーが加速化することにあるのです。その観点からいっても,スペルミジンはラパマイシンのように働くようですね。
FM でも,一つ大きく違うのは,ラパマイシンは毒性があります。もし,野生のマウスにラパマイシンの実験をしたとすると,すぐに感染から死んでしまうでしょう。それは,ラパマイシンに免疫抑制作用があるからです。スペルミジンがとても面白いのは,オートファジーを誘発する薬があり,その薬は体にすでにあるものなので,おそらく安全であるという点です。
KT それはとても魅力的ですね。そして,先生のお話の中でもありましたが,メカニズムとしては,スペルミジンはアセチルトランスフェラーゼの抑制として働くということです。
FM そうなのです。In vivoにおいてもin vitroにおいても,アセチルトランスフェラーゼを抑制します。これは,おそらく脱アセチル化したクロマチンという健康な加齢のマーカーとなりうる成分が生まれる理由だと考えられます。脱アセチル化したクロマチンは脱アセチル活性によって起きます。それは,たとえばサーチュインのように,です。
KT サーチュインは日本抗加齢医学会でもよく知られています。ということは,スペルミジンは,サーチュインのようにも働くということなのですね。
FM そうです。それは違った方法で発生しますが,脱アセチル化クロマチンという同じ終着点をもつのです。しかし,サーチュインがヒストン脱アセチル化によってそうなるのに対し,スペルミジンはヒストンのアセチル化を抑制するのです。もう一つ違いがあるとすれば,サーチュインを活性化したからといって,健康なマウスの寿命が長くなったことはないということです。これを忘れてはいけません。レスベラトロールとサーチュインの活性化は,肥満マウスでは効果がありましたが,普通のマウスの寿命を延長しなかったのです。
KT スペルミジンでマウスの寿命が長くなったという研究があると先生の講演でうかがいました。そう考えると,スペルミジンがサプリメント食品となり,体の中で働くように摂取できるということで,とてもワクワクしますね。また,納豆についても言及され,日本人にとっては本当に驚きです。納豆を私たちはほぼ毎日食べていますが,納豆にスペルミジンの濃度が一番濃いということなのですから。
FM 日本人の先生のグループの研究があるのですが,納豆をヒトに与えてスペルミジンの濃度を測ったのです。私の記憶が正しければ,血液中のスペルミジンの高まりがあったんですよ。
KT 先生の研究を聞いて,日本人は納豆を食べ続けないといけませんね。
FM そうですよ。でも,日本人は納豆が健康的だと知っているのですよね。
KT はい。納豆には納豆キナーゼが含まれていて,ビタミンKやタンパク質が多いので,健康な食品であることは知られています。そして,低GI食品でもあるという点もそうですね。でも,スペルミジンが入っていることを私自身は知りませんでした。毎日食べていますし,納豆は大好きです。
FM きっと,健康的な効果があるんでしょうね。とてもお若くみえます。
KT ありがとうございます。そして,先生の研究では加齢に関係する病気を抑制するものとしてスペルミジンを使っているのですか? 新しい実験などにも取り組んでいらっしゃいますか?
FM 日本からは,加齢に伴う死亡率とネフローゼがなくなるというエビデンスが出ています。今いくつかの加齢性疾患についての研究をしていますが,まだ結果が出ていません。
KT とても面白いですね。レスベラトロールのアンチエイジング作用はよく知られていて,それが今では2型糖尿病の治療薬になっています。そして,先生も同じアイディアをおもちなんですね。
FM ポイントは,スペルミジンがあれば天然のオートファジー誘発剤とすることができ,私たちと一緒に研究している人たちの共通の意見は,スペルミジンがラパマイシンよりも強い成分だということです。オートファジー機能の低下は,神経変性病だけでなく,心臓発作などさまざまな疾患で問題となります。多くの科学者は,オートファジーができなくなることは,脂肪肝や肝硬変などの肝臓病で重要な問題なのではないかと信じています。こういった病気はオートファジーで治療が可能だと考えているのです。
KT 読者にオートファジーの重要性をわかっていただくよい機会だと思いますので,オートファジーの大切さについて少し説明してもらえますか?
FM オートファジーがとても重要なのは,もし,適切な栄養を摂りながら少なく食べるCR(カロリーリストリクション)をした場合,さまざまな種族で寿命が長くなりました。でも,もし,同じことをしてオートファジーの機能を制限してしまうと,寿命は長くならないのです。これは非常に面白いことで,というのも,オートファジーこそが分子レベルで浄化に関連のあるものであり,ヒトが断食をしたときに起きるものだからです。断食をすると,清潔になったと感じ,精神的にも純粋になったと感じます。これには分子レベルでの理由がある訳です。オートファジーは,損傷されたタンパク質,ミトコンドリアなどの損傷を受けた小器官を取り除くことで,あなたの体をきれいにするのです。
KT ということは,スペルミジンは,CRをしなくても作用し,体を綺麗にするということですか?
FM そうです。体は,自分が食べていても断食していると感じるのです。
KT スペルミジンの言葉の由来を教えていただけますか?
FM スペルミジンは精子の濃度が濃い部分で起きます。古い文献をいくつか調べたのですが,ドイツの有名な哲学家のFriedrich Nietzscheの文献に素晴らしいものをみつけたのです。彼は「血液によって再吸収された精子液ほど素晴らしいエネルギーはない」とありました。
KT アンチエイジング医学ではセックスもとても重要だとされていて,2010年8月号(6巻4号)では性を特集しました。明確なのは,女性にはとてもよい効果があるということです。
FM それは調べたことはないですが,推測できることですね。
KT 先生の夢や,これからアンチエイジングがどのようなトレンドに進むかについて,ご意見をください。
FM 私の夢は,疫学的基礎研究で増えている神経変性病などの現代病に打ち克つことです。おそらく何かよいことが得られると思うのです。おじいさんが孫とあと1年長く過ごせるようになる,それだけでもすばらしいと思うのです。
KT すばらしいです。研究がうまくいくことを願っています!ありがとうございました。


KT Thank you for taking time for this interview. You gave a wonderful talk, "Inhibition of Necrosis Promotes Longevity" in the session Cell Death and Aging at the Gordon Research Conference Biology of Aging , Switzerland. Surprisingly, you explained that spermidine, which is a very important ingredient found in natto, can extend the lifespan. Would you please explain more about your research?
FM What we did, by chance, was to put spermidine on aging yeast cultures and we made a funny collateral observation which had nothing to do with the research project we were actually working on.
KT So you had a serendipitous moment!
FM Yes, and I believe in scientific accidents, and I believe that the real discoveries come from the things that are bigger than what you could have imagined. So we were seeing this huge lifespan extension in yeast and then we thought that this looks somehow intriguing so we came to think about how spermidine is highly concentrated in the male sperm. That made sense because in the spermatozoa, the clock is set to zero so they may have the fountain of youth around them probably. This is why we started to investigate this effect in detail in other organisms like in worms and flies, and to some extent mice, and also human immune cells. which we took ex vivo from human donors. In every case, we saw a nice life span extension. Then we started to measure spemidine in aging yeast and found out that in the course of ageing, the cellular spermidine concentration decreases, which could be an aging limiting factor. Also, humans have declining concentration of spermidine when they age.
KT Is spermidine in all cells everywhere?
FM Yes, it is everywhere, in every cell, in every organism, I would say.
KT The concentration of spermidine declines with age, so the idea is why not provide it from the outside.
FM Yes, because it is intriguing that when you age you not only have a lower spermidine concentration, but you also lose the ability to induce autophagy, the self-cleaning process of cells and organisms. Spermidine actually strongly increases autophagy, and autophagy in turn has been shown to be responsible for lifespan extension in many models. So the idea may have problems to induce autophagy in your aging body because you do not have spermidine. The external administration of spermidine may overcome this failure, though I warn everybody to simply drink spermidine It may have serious side effects, if concentrated too high.
KT Currently, rapamycin is attracting attention because the expression of mTOR is very important for longevity, and the major mechanism is the acceleration of autophagy. From that point of view, spermidine is working like rapamycin.
FM But with one clear difference, and the clear difference is that rapamycin is toxic. If you would do the rapamycin experiment with wild living mice, they would die soon of an infection because rapamycin is an immunosuppressent. Why this could be really interesting is that you have a drug that induces autophagy that is possibly safe because your body knows it very well.
KT This is very appealing. Also, as of the mechanism you mentioned in your talk, spermidine is working as suppressor of acetyltransferase.
FM Right. It suppresses acetyltransferase in vivo and in vitro, and this is probably the reason why we get a deacetylated chromatin, which could be also a marker of healthy aging. Deacetylated chromatin can be achieved by activation of deacetylator activity, like the sirtuins for example.
KT The sirtuins are very famous among the members of Anti-Aging Society of Japan. In some way, spermidine is working similar to the sirtuins.
FM Right, although it starts from a different corner but come to the same end point; which is deacetylated chromatin. But while sirtuins may achieve this via histone deacetylation, spermidine inhibits histone acetylation. Another difference is that no one has ever prolonged life span of healthy mice by activation of sirtuins. Resveratrol and activation of sirtuins does not prolong the lifespan of normal weight mice, though resveratrol prolongs life of obese mice.
KT In the limited paper showing that spermidine extends the lifespan of mice, as you discussed in your talk, it is so exciting because we can take the spermidine as an oral supplement and it is working in your body. You have also mentioned natto and that is amazing to the Japanese people. We eat it almost everyday and it has the highest concentration of spermidine.
FM There was a study by a Japanese group. They gave natto to persons and measured how the spermidine concentration changed. If I recall correctly, they found an enhancement of spermidine in the blood.
KT So you are encouraging Japanese people to continue eating natto.
FM Yes, but they always knew it would be healthy.
KT Yes, we already know it is healthy because it contains natto kinase, has a high concentration of vitamin K and protein, and is a low glycemic index food, but I personally did not know of the spermidine contents. I eat it almost everyday and love it.
FM That may be part of the healthy effect. That is why you look young!
KT Thank you very much. So do you think by using spermidine you can suppress the age-related diseases? Would you elaborate on some new experiments?
FM There is evidence from a Japanese study that it diminishes age-associated mortality and glomerulonephritis (Soda and colleagues, 2009). We are currently investigating a couple of other age-related diseases but we do not know yet.
KT That is very interesting because resveratrol is famous for anti-aging but it is now used for the treatment of diseases such as type II diabetes. So you have the same kind of idea.
FM The point is that with spermidine, we have a natural strong autophagy inducer and people that are collaborating with us tell us that it is even stronger than rapamycin. And impaired autophagy is an issue in many diseases, like all neurodegenerative diseases, but also things like heart attacks. Many scientists believe that lack of autophagy could be important in liver diseases like fatty liver or cirrhosis of the liver. These kinds of things could be cured by autophagy potentially.
KT This is a very good opportunity for the reader to understand the importance of autophagy so would you please explain a little more about the important of autophagy in general?
FM I think autophagy is very important because it has been shown that if you practice caloric restriction, which means that you are eating less with optimal nutrition, you prolong life in many organisms. But if you do the same and restrict the capacity of the organism to undergo autophagy, you do not have lifespan extension. So it means you need autophagy for the lifespan extension effects of caloric restriction. This is actually interesting because this may be the molecular correlate of catharsis, what people report when they fast. They feel themselves cleaned, they feel more pure afterwards, and there is a molecular reason behind this. And autophagy cleans up your body essentially by removing damaged proteins and damaged organelles like mitochondria, and so on.
KT So spermidine can work without calorie restriction and clean up your body.
FM Right. So your body thinks you fast even though you eat.
KT Would you please explain about the origin of the word spermidine?
FM Spermidine occurs in highest concentrations in sperm. I did some classical literature research and found a gemstone in the literary remains of the famous German philosopher, Friedrich Nietzsche, who said, “there is no better energy source than sperm liquid resorbed by the blood.”
KT In the anti-aging field, sex is very important and the August 2010 issue of Anti-Aging Medicine focused on sex. It showed that clearly women can get a beneficial effect.
FM I haven’t investigated it, but we can speculate.
KT Please tell us your dreams or future directions on anti-aging trends.
FM My dream is to actually defeat some of the modern diseases that are increasing on an epidemiological basis like neurodegenerative diseases. Perhaps, we can manage to get at least some benefit. For example if one grandfather could recognize his grandchild even one year more, then it would be a great thing.
KT Wonderful! Wonderful! I hope your research goes well. Thank you very much.


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