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Review(再生医療)

再生医療や立体組織培養のための高分子足場材料

酒井崇匡味岡逸樹鄭雄一

再生医療 Vol.17 No.3, 39-52, 2018

我々,多細胞生物は自然治癒力なしで個体を維持することが難しい。例えば,些細なすり傷は簡単に修復され,アルコール性肝炎も断酒により治癒することが多い。しかし,損傷の度合いが大きかったり,組織や臓器に過度な負荷がかかると自然治癒力のみで修復することが難しくなる。例えば,単純な骨折であれば,元の位置に戻し固定さえしておけば,治癒させることが可能である。一方で,粉砕骨折などの難治性骨折の場合には,骨折の癒合が遅れたり癒合しなかったり,骨が短縮して癒合するなどの問題が生じる場合もある。また,アルコール性肝炎も飲酒が続くと肝不全に陥ることもある。このように組織損傷の度合いが閾値を超えると,生体の持つ自然治癒力に依存した治癒は困難になり,さらなる積極的な介入が必要となる。その方法論として,これまで主流であったものは「人工臓器(Artifi cial organ)」と「臓器移植(Organ transplantation)」であった。
人工臓器は生体の臓器または組織の機能を代行する人工の装置と定義され,現在では人工血管や人工骨,人工心臓,人工肝臓,人工腎臓など,多くの人工臓器が医療現場で用いられている1)。しかしながら,人工装置であるがゆえに機能が十分でなかったり,異物として認識されたり,劣化による機能低下が起こるといった多くの問題があることも事実である。一方,臓器移植とは,重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に,他者の健康な臓器と取り替えて機能を回復させる医療と定義されている2)。人工臓器に比べ,生体由来である移植臓器は機能の上で優れていることは言うまでもない。しかしながら,他者由来の移植臓器に対する免疫反応を抑えるために免疫抑制薬を一生涯飲み続ける必要がある。また,日本だけをみても臓器提供を待つ患者の人数がおよそ13,000人であるのに対して,移植を受けられる患者数は年間およそ300人程度であるという,慢性的なドナー不足の問題もある。
「KEY WORDS」再生医療,高分子足場材料,オルガノイド,運動器再生,神経再生

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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