Ⅱ.再生と癌
脳腫瘍に内在する幹細胞様細胞
再生医療 Vol.5 No.2, 72-78, 2006
「はじめに」「失った組織を再生することができれば」とは人類の長年の夢である. 近年さまざまな幹細胞が成体組織内に発見され, 機能細胞を終生生み出し組織の恒常性維持に働いていることが示されている1)2). もし幹細胞を自由に操ることができれば, 今まで夢でしかなかった機能再生が可能かもしれない. たとえば, 成人脳にも存在する中枢神経系幹細胞(神経幹細胞)は培養条件により自己複製し, 神経系機能細胞(ニューロン, オリゴデンドロサイト, アストロサイト)を生み出すことからアルツハイマー病, 多発性硬化症などの中枢神経系疾患への適用が期待されている3)4). ところが, 最近さまざまな悪性腫瘍および癌細胞株に組織幹細胞と同様の自己複製能, 多分化能, 腫瘍形成能を有する少数の細胞(癌組織内幹細胞様細胞;癌幹細胞)が発見されている5)-20). 脳腫瘍の約30%を占める悪性グリオーマはグリア細胞マーカー, 神経細胞マーカーおよび神経幹細胞マーカー陽性細胞を含むヘテロ細胞集団であることが以前から報告されており, 神経幹細胞様細胞がグリオーマ発生, 維持にかかわっていることが示唆されていた21)-26).
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