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インフルエンザ制圧国際会議(Options)

第7回インフルエンザ制圧国際会議(Options for the Control of Influenza Ⅶ)参加報告

深田勝彦池野大介

インフルエンザ Vol.12 No.2, 80-82, 2011

学会概要
 本国際会議は3~4年に1回開催されるインフルエンザ最大級の学会である.2007年のカナダ以来第7回目となる今回は,香港島の海岸沿いにあるコンベンションセンターにおいて,64カ国から1,300人以上の参加者を集め,5日間にわたり開催された.午前中はパンデミック対策の基調講演,サーベイランスや疫学,免疫学,病原性解析,ウイルス伝播,ウイルス学,ワクチンなどの講演,午後は3つのワークショップに分かれ口頭発表,夕方からはポスター発表の討論会,早朝と夕方にはサテライトシンポジウムが行われ,大変密度の濃いプログラムであった.演題の多くは昨年のPandemic(H1N1)2009ウイルス関連で占められていたが,ほかにもインフルエンザの幅広い分野での報告があり,最新のインフルエンザ研究の知見を俯瞰するのに絶好の機会であった.以下誌面の都合上,Pandemic(H1N1)2009ウイルス関係を中心とし,トピック別に概要を述べたい.

Pandemic(H1N1)2009の公衆衛生対策

 WHOから,今回のパンデミック対策において,Pandemic(H1N1)2009ワクチンが20カ国以上でおよそ6カ月でライセンス承認され,接種回数や接種対象者などの情報が適時共有されたことは大きな成果であると一定の評価がなされた.ただその一方で,ウイルス対策の国別の偏りが問題視された.具体的には,本ウイルスは215カ国で流行し,ワクチンと抗ウイルス薬が72カ国で準備されたが,人口比でわずか10%の地域にワクチン供給が偏っていた.今後WHOは“Technology Hub”として,地域差を埋める努力を進めたいという宣誓がなされた.
 またミネソタ大学のOsterholmは,パンデミックの損害の指標として死亡数のみを挙げるのは適切ではなく,「Years of life lost(失われた生存年数)」でも評価すべきと提案した.これはPandemic(H1N1)2009は高齢者の死亡数が少なく若年層の死亡が多いためであり,この指標で評価すれば1957年,1968年のパンデミックと遜色ないとのことであった(昨年度のUSでの死亡数は>65yが9%,25~64yが65%,<24yが18%であったが,例年は90%以上が65歳以上).

ワクチン

 今後のワクチン開発の方針としては,ユニバーサルワクチンが主流となることが学会全体から感じ取れた.Sanofi Pasteurのシンポジウムでは,①M2eワクチンが16社,②HA共通領域が5社,③internal proteinが4社,④ ①~③の複合,その他が13社と報告された.現時点ではいずれも研究レベルに留まっているが,今後の発展が期待される.
 そのほかSanofiのシンポジウムでは,カナダ西部のHutteriteコロニーにおける季節型ワクチンの小児接種の結果が紹介された.このコロニーはほとんどワクチン非接種者であり,小児接種後に地域住民のインフルエンザ疾患発病が半分以下に抑制されたことから,インフルエンザワクチンのherd immunity効果が示唆された.なおこの現象は,日本での小児定期接種中止後に日本全体のインフルエンザ患者が増加したというデータと類似していると紹介されており,ともにインフルエンザワクチンのherd immunity効果を示した重要な結果といえる.

抗ウイルス薬

 CDCからは,Pandemic(H1N1)2009が誘導した肺炎事例では,オセルタミビルを発症48時間以内に処方された事例はわずか17~30%であり,肺炎事例の16~18%は死亡していたとの報告がなされた.一方日本では患者の67%が発症1日までに,89%が発症2日までに抗ウイルス薬が投与されており,これが諸外国に比べて日本の死亡率が顕著に低い原因であると,けいゆう病院の菅谷先生からの報告があった.
 Pandemic(H1N1)2009でのオセルタミビル耐性菌は約1%であったものの,耐性ウイルス出現の可能性を考えると新たな抗ウイルス薬が待たれるところであり,複数の新薬の演題があった.なかでも第一三共のNA阻害薬CS-8958はPandemic(H1N1)2009に対し,20mgの1回投与でオセルタミビル10回投与と同等のILI(influenza like illness)・発熱期間の短縮効果が認められており,有効性/利便性からも期待がもたれる.
 今後の抗ウイルス薬として,①ウイルス粒子自体の阻害薬(polymeraseを標的にした富山化学のT-705など),②免疫応答inducerの調整因子,③ウイルスライフサイクル因子の阻害薬,などが多数研究されていることが報告された.なお③の一例として,NF-κBを阻害するドイツFriedrich-Loeffler-InstitutのSC75741は,耐性ウイルスがオセルタミビルより出現しにくいことを動物データで示している.ほかにも多数の具体的な報告があり,今後抗ウイルス薬の研究はますます発展することが感じ取れた.

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