発生学・再生学シリーズ
概説(心血管系の発生と再生)
血管医学 Vol.13 No.2, 79-84, 2012
21世紀に入り, 心血管系の発生分化の概念は大きく変わってきた. 傷害後に再生することはないと考えられていた心筋細胞が分裂能を有し, 再生能力をもった幹細胞が出生後の心臓にも存在していることが報告された. 胚性幹(embryonic stem;ES)細胞や人工多能性幹(Induced pluripotent stem;iPS)細胞の出現により, 再生心筋細胞を用いた治療も現実になりつつある. 本稿では心臓の発生分化, 再生に関して概説する. 「はじめに」心臓は脊椎動物において発生上最初に形成される臓器である. 動物種の進化とともに心臓の形態も環境に適応するために進化してきた. ショウジョウバエの段階では脊椎動物の原始心筒に類似した構造をとり, 背脈管と呼ばれる. 心臓は構造上血管の一部であり, 開放循環系に血液を循環させている. 魚類の心臓になると心房と心室というヒトと類似の構造を呈するようになるが, その構造は1心房1心室である.
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