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血管とDDS:高分子薬剤のEPR効果による腫瘍デリバリーと癌治療

血管医学 Vol.9 No.4, 83-95, 2008

近年になり登場したポリマー結合薬剤, 薬物抱合リポソーム/ミセル, PEGその他ポリマー修飾タンパク質や抗体, 更に遺伝子までも包含する高分子型薬剤は, 固型癌に対する選択的なターゲッティングが可能になるという点で注目が集まっている. これらの高分子型薬剤は, 固型腫瘍に特有の血管構築を利用することで, 腫瘍選択的なデリバリー/ターゲッティングが可能となる. 我々は, 1986年にこの腫瘍への選択的なデリバリーのための共通な現象(機序)を発見し, それをenhanced permeability and retention effect(EPR効果)と名付けた. EPR効果は, 癌のドラックデリバリーシステムの研究において, 図1に示すように, ここ数年最も注目されている問題であり, 今日では腫瘍選択的な薬物送達のための薬剤設計の基本的なコンセプトとなっている. そのEPR効果は, まず正常組織と腫瘍組織における血管の構造上の違いに起因している. それに加え, いくつかの因子が関与している. 例えば, ブラジキニン, 一酸化窒素, プロスタグランジンなどの各種血管作動因子, 更に血管内皮細胞成長因子VEGF(vascular endothelial cell growth factor)なども深く関わっている. EPR効果は, 分子量40 kDa以上の生体親和性のある高分子にみられる. EPR効果の重要な点は, 腫瘍に対する単なるパッシブターゲティングだけでなく, 腫瘍組織へひとたびデリバリーされた高分子型薬剤が長期(数週間)にわたり, その局所に留まること(retention)を意味している. 正常組織では, これら高分子や油滴はリンパ系により回収される. これに対して腫瘍組織では, それらは長期にわたり滞留する. その理由は, 固型腫瘍組織においてはリンパ系による高分子物質の回収が機能不全になっていることを示す. このことは, 腫瘍に選択的なデリバリーと同様に重要である. 本レビューにおいて我々は, はじめに現在の癌化学療法の問題点を考察し, そして癌に対するピンポイント攻撃の基礎となるEPR効果をもたらす原因を考える. 即ち, 腫瘍血管の特徴的構築と, それらに関わる各種血管透過因子を概観する. 更に, 薬理学的に重要な高分子薬剤の腫瘍/血中濃度比, 血中半減期およびその高分子型薬剤から活性成分の徐放(放出)率などの議論を行う. 最後に, 人為的にEPR効果を倍増する方法についても議論をする.

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