<< 一覧に戻る

日本緑内障学会

第21回日本緑内障学会 シンポジウム3:補助材料(薬剤)を利用した緑内障手術 緑内障のインプラント手術

谷戸正樹

Frontiers in Glaucoma No.41, 42-43, 2011

赤道部濾過型インプラントの成績
 緑内障インプラント手術は,眼外に房水流出を増加させることを目的として,医療材料(glaucoma drainage device:GDD)を眼球に移植する手術の総称である.その作用機序・形状から,輪部角強膜内空隙(レイク)保持を目的として留置される吸収性あるいは非吸収性のGDD,流出路再建によるシュレム管あるいは脈絡膜上腔の流出促進を目的としたGDD,輪部あるいは赤道部における房水濾過を目的としたGDDに分類される.なかでも,AGV(Ahmed glaucoma valve)など,房水濾過を目的とした赤道部濾過型インプラントが注目されている(図).

 われわれは,AGVを後房に移植した26例31眼を調査したところ,病型は血管新生緑内障が12眼と最も多く,特に糖尿病合併例が多かった.また,続発開放隅角緑内障8眼,原発開放隅角緑内障6例と続いた.手術既往は平均3.2回で,うち1回はほとんどが硝子体手術後の高眼圧例であった.平均眼圧は術前33mmHgが,最終観察時(平均約1年)には15.3mmHgとなった.

合併症と対策

 合併症で最も多い一過性高眼圧は,プレート周囲の被膜形成や,チューブやプレート内へのフィブリンなどの貯留によって起こるといわれている.これにはマッサージが効果的といわれており,私は1秒10回,朝晩1日2セットを勧めている.チューブ脱出・露出はパッチなしではほぼ必発であるため,6mm×6mmの半層強膜弁を作って覆っている.それでも発生する場合もあることから,保存強膜などのバックアップを用意している.
 角膜障害は長期予後に関する最も主要な合併症とされており,チューブ先端の内皮接触は避けなければならない.後房留置と前房留置の眼圧コントロールには大きな差がないと予想されることから,角膜移植眼や内皮減少眼では,最初から後房留置を選択したほうがよいと思われる.
 複視は大人では5%程度であるが,小児では37%起こるという報告があることから,大プレートを使用する場合は術前に患者に説明しておく必要がある.そして小児には小児用を使うことが望ましい.
 なお,今回のようにバルブ付きを使用すれば低眼圧の頻度は低いが,バルブなしの場合は5-0デキソン・バイクリルによるチューブ結紮あるいは8-0ナイロン結紮+レーザー切糸などで対応できる.そして術後感染は稀であることから,線維柱帯切除術後にブレブ感染を繰り返す患者は,インプラントの適応と考えられる.

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る