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日本緑内障学会

第21回日本緑内障学会 データ解析委員会特別セッション 後期緑内障研究―中間報告―

杉崎顕史

Frontiers in Glaucoma No.41, 35, 2011

 後期緑内障研究は,後期緑内障患者の臨床像や進行過程を理解することを目的に,全国7施設共同で,2004年から経過観察5年間として開始された多施設前向き研究である.目標症例は200名とし,20~80歳までの緑内障患者で,病型,内眼手術歴や全身疾患の有無は問わない.また,視野に影響を及ぼす緑内障以外の眼疾患がないこと,信頼性のある視野測定が可能なこと,少なくとも1眼はハンフリー視野計(HFA)SITA standard24-2のMDが-20db以下であること,矯正視力が0.5以上であることを満たすことを選択基準とした.経過観察は,眼圧を2~3ヵ月に1回,HFA10-2視野と視力を半年に1回,HFA24-2視野と血圧を年に1回測定することで行う.

 最終的に2009年末でエントリーが締め切られ,目標を超える271名がエントリーされた.うち男性は180名と,女性の約2倍と多く,エントリー時平均年齢は63.2歳と高齢者が多かった(約70%).病型の内訳は,POAG(狭義)が110名(40.6%),NTGが96名(36.3%),原発閉塞隅角緑内障(PACG)が23名(8.5%),落屑緑内障が17名(6.3%),続発緑内障が17名(6.3%),発達緑内障が10名(3.9%)と,母集団を考慮するとPOAGの割合が多く,NTGの割合がかなり少なかった.また,エントリー時眼圧は全例治療中であることから平均13.2mmHgであったが,無治療時眼圧の平均は24.4mmHg(76例不明)と比較的高く,視野はHFA10-2で平均-23.15dB,HFA24-2で平均-25.81dBと進行していた.視野パターンは,中心視野は上方鼻側が悪く,中央下からやや耳側にかけては比較的良好という症例が多かった.なお,現時点の経過観察期間は平均3.8年で,1/3の91名が5年間の経過観察をすでに終了している.
 そこで,経過観察4年以上の症例105名105眼[男性71例,女性34例,平均年齢67.2歳,POAG(狭義)42名,NTG 35名,PACG 9名,その他19名]を対象に視野進行に影響する因子を検討した.経過中,15.2%に手術を施行し,緑内障手術を行った例が16名,白内障手術を行った例が7名で,うち4名は両手術を行った例で,これらの症例は解析から除外した.
 視野障害の進行をみるために10-2視野の平均TD値(MTD)のslope(視野障害の進行)を症例ごとに計算したところ,slope<-0.5dB/年が31名と約30%を占め,22名は有意に傾きが負となり,1名はslopeが-3dB/年と急速な進行を認めた.また,手術例を除き,slopeに影響を与える因子について,従属変数をMTD slope,独立変数を年齢,性別,病型,収縮期・拡張期血圧,エントリー時MD,無治療時からの眼圧下降率,角膜厚,refとし,重回帰分析をしたところ,有意な因子として病型が同定された.すなわち,POAGとNTGを含む,いわゆるOAGではその他に比べて,MTD slopeの負の傾きが有意に大きく,視野障害の進行に眼圧依存性因子が強いと思われる例で眼圧下降効果が出やすいと考えられた(表).

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