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消化管の新たな映像

第2回 Endocytoscopy

―Endoscopic pathologyへの道―

井上晴洋池田晴夫細谷寿久鬼丸学吉田亮加賀まこと工藤進英

Frontiers in Gastroenterology Vol.16 No.3, 46-51, 2011

要 旨
 Endocytoscopy(340~1,100倍)は,上皮の最表層の細胞を描出する。細胞異型の評価も可能である。一方,これまでのNBI拡大内視鏡(70~80倍)では,たとえば食道では,IPCL(intra-epithelial papillary capillary loop:毛細血管)の変化を指標として上皮深部の構造異型の情報を提供する。拡大と超・拡大を組み合わせることにより,食道扁平上皮の深部の構造異型と最表層の細胞異型を併せて評価できることになる。たとえば,IPCL-Ⅳで高度上皮内腫瘍(HGIN)の疑いがあった場合でも,ECA-3であれば,病巣内での上皮の層状分化が比較的良好であるということになり,LGINやHGIN, indefinite for neoplasiaなど全層置換されていない病巣ということになる。また同じIPCL-ⅣでもECA-5であれば,上皮の表層まで高度の異型があることになり,HGIN以上の病変ということになる。
 胃では,メチレンブルーの単染色ではなかなかコントラストのあるエンドサイト像が得られなかったが,CM染色(crystal violet & methylene blue staining)により比較的容易な染色が可能となった。このようにendocytoscopyはNBI拡大内視鏡の情報に加えて,上皮の性状診断に組織学に迫る有用な情報を提供する。Endocytoscopyの登場とCM染色の開発によりendoscopic histologyも現実のものとなってきた。

はじめに

 1990年ごろより,先達の努力により80~160倍の拡大能を有する拡大内視鏡が登場し,それは大腸におけるピットパターン診断の業績へとつながる1)。一方,重層扁平上皮に覆われている食道では,腺管開口部(ピット)にあたるものは観察されず,扁平上皮乳頭内における毛細血管(IPCL)のパターン診断が病変の性状診断に重要であることが判明した2)3)。さらに胃でも,demarcation lineの認識および異常微小血管の出現が分化型癌の視認に有用であることが報告4)されている。一般的に,拡大内視鏡は70倍前後の拡大能を有しており,粘膜表面模様や表層の微小血管2)-4)の変化を鮮明に捉えることができ,早期癌の診断に有用である。このようななかでさらに倍率を上げて,生きた癌細胞そのものを観察できないか?! と考えた。そこでオリンパス社との産学共同研究として約340~1,100倍の超・拡大内視鏡の開発に至った。

Endocytoscopy開発までの経緯

 拡大内視鏡観察は,先人らによりこれまでも試みられてきた。今をさかのぼること40年以上前に,山形ら,丹羽ら5)6)は直腸において,細胞観察を試みている。その後,生体内細胞観察の夢は以下のような研究に引き継がれる。超・拡大内視鏡観察は大きく分けて,「共焦点レーザー顕微鏡を用いる手法」と,「光学式のcontact endoscopyの手法」がある。筆者らは当初,レーザー共焦点顕微鏡を用いて細胞観察を行おうとするプロジェクトを1996年より産学協同研究としてオリンパスと開始した。その際,生体染色は薬剤性ショックなどの報告7)があることから,無染色での描出を目指した。レーザー光の反射光を計測する方法で,無染色での画像の獲得に成功した8)。マイクロマシーンの技術を適応することで9),カテーテル型のプローブの作成が行われ,口腔内,食道,胃,大腸の生きた細胞を無染色で観察することに成功している。食道扁平上皮癌や胃の未分化型癌では,細胞質と核の輝度の逆転現象が起こることが判明した。すなわち正常細胞では細胞質は低輝度,核は高輝度に描出されるのに対して,癌細胞では腫大した核は低輝度に,細胞質は高輝度に描出されて,両者間で輝度の逆転現象がみられた。また大腸では,正常では核は基底側に偏在しており認識されないことが多いが,腺腫では核が細胞質の中央へみられることが多く,さらに癌においては,細胞内において核の極性の乱れを呈していく様子が観察された10)11)。Opti-scanはフルオレスセインの静注による高コントラストの画像の獲得ができた12)13)。しかしOpti-scanでは異型度診断の重要な指標となる核異型の診断は不能であった。
 一方,「光学式のcontact endoscopy」においては,1980年にHamouらにより,婦人科領域で,硬性鏡(Karl Storz社)を用いて細胞を直接みようとする試みがあり,contact endoscopy(接触型内視鏡)として報告されている14)。このcontact endoscopyを背景として,1982年に多田正大らはオリンパスと共同で,レンズの切り替え式(ターレットを回転させる)で光学レンズ系の倍率をおよそ170倍まで上げた拡大内視鏡(接触型のファイバースコープ)を開発して,大腸粘膜の観察に成功している15)。メチレンブルー染色により,ピットの超拡大観察のみならず細胞核の観察が可能であることが報告されている。Andrea Mらは,耳鼻咽頭喉頭領域で,細胞観察の報告を行っている16)。近年,大植らが,Karl Storz社製の硬性鏡を用いて,大腸癌の観察を行い,再びcontact endoscopyを再評価した17)。さらに熊谷らも,同じKarl Storz社製の硬性鏡を用いて,食道扁平上皮細胞におけるin vitroでの細胞観察を報告している18)。そこで消化管上皮の生体内での観察を目的として,カテーテル型の超・拡大内視鏡(Endocytoscopy,プロトタイプ,オリンパス)の開発が,大植,熊谷,井上(筆者ら)の共同提案のもと進められた19)。Endocytoscopyは,光学レンズ系による接触型拡大内視鏡であり,画質および画像獲得の再現性の高さは優れており,現在の病理診断学のgold standardの1つである生検材料の組織診,あるいは細胞診の画像に匹敵するものと期待される20)21)。2つのシステムの比較は文献22に詳述したので参照されたい。Endocytoscopyでは,細胞および細胞核の観察が可能であり,異型度の評価が可能である23)。Endocytoscopyはさらなる進化を遂げて,一体型となり,二眼タイプを経て,一眼タイプとなった。一眼タイプでは,通常拡大から超・拡大(340倍)が連続で可能となった24)。

CM染色の開発とECA分類

 これまでエンドサイトは,「メチレンブルー単染色」による細胞観察が行われてきた。確かに食道扁平上皮では「メチレンブルー単染色」でも細胞および細胞核の描出が可能であり,ECA(Endocytoscopic diagnosis of tissue atypia)分類を用いた内視鏡的な組織の異型度診断も可能であった23)(表1)。

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