脳卒中の治療技術
頸動脈狭窄に対する内科療法
脳と循環 Vol.16 No.3, 57-60, 2011
はじめに
頸動脈狭窄症は,以前は欧米人に多い疾患とされていたが,日本人の食生活の欧米化,高齢化社会化に伴い,わが国でも徐々に増加傾向を示している.また,頸動脈エコーの普及により無症候の状態での発見も増加してきている.頸動脈狭窄の治療目的は,同側虚血性脳卒中の発症予防による健康寿命の延伸と生活の質の改善であり,狭窄部位の安易な拡張や血管整形ではない1)2).手術適応の有無にかかわらず,まず最良の内科治療を行うことが重要である.
症候性頸動脈狭窄の治療
1.NINDS 分類(表1)
脳梗塞治療においてNINDS(National Institutes of Neurological Disorders and Stroke)による脳血管障害分類第Ⅲ版 3)がよく用いられており,発症機序による分類と臨床病型による分類を特徴としている.頸動脈狭窄に関連した脳梗塞の場合の臨床病型は,通常アテローム血栓性と考えられる.発症機序としては塞栓性(artery-to-artery embolism),血行力学性あるいはこれらの混在性であることもあり,臨床症状や画像検査結果などを踏まえた総合的な判断が必要となる.
2.超急性期の治療
遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター(rt-PA)の静脈内投与は,発症から3時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害で慎重に適応判断された患者に対して強く推奨4)され(グレードA),病型を問わずに行える治療法であり,頸動脈狭窄を有する患者であっても例外ではない.頸動脈高度狭窄が閉塞して生じた脳梗塞ではrt-PA で再開通し,その後再び症状が増悪したり,再発する例もあることから,厳重な輸液や循環管理を行い,他の血栓療法の再開時期を判断する2).
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