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大震災後のよりよい医療の復旧・復興を目指して

東日本大震災の経験から明らかとなった日本の医療再生への課題

宮田裕章渋谷健司大久保豪後藤満一埴岡健一髙本眞一

Surgery Frontier Vol.18 No.4, 49-55, 2011

Summary
 第二次世界大戦以降の日本は,1955年に2つの保守政党を統合することで政治的安定を達成し,この安定を利用してさまざまな分野において日本型システムを確立し,経済成長を実現してきた。国際的な観点からも日本の達成した公平性は意義のあるものであるが,この体制は高度経済成長やピラミッド型の人口構造を前提として成立していたものであり,経済成長が鈍化し,高齢化が急速に進行している今日においては,システムの変革が急務である。東日本大震災を端緒にして発生した原発危機においては,このような日本型システムの弱点を浮き彫りにするものであり,その問題構造の多くは医療においても共有されるものである。本稿では“ステークホルダー間の役割の再検討”,“保健医療サービスの質の向上”,“市民社会におけるコミュニケーション”,の3つの視座より,東日本大震災が提示する課題を検討した。

Key Words
医療改革,東日本大震災,医療の質,共生,医療政策

はじめに

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は,日本の強さとともに弱さを浮き彫りにしている。特に,広範囲に対する影響を及ぼした2次災害である福島第一原子力発電所における事故は,危機の深刻化において人的要因が多く寄与しており,未然に防ぐことができたものであると考えられている1)。原子力発電所の安全性は,単に技術自体のレベルだけではなく,技術を管理・利用する人々にもよるところが大きい2)。日本では,福島第一原子力発電所を端緒にした危機をめぐり,当事者となる原子力行政に対して多くの批判がなされているが,危機を引き起こした問題の構造は,多くの日本型システムに共通するものである。この問題は決して対岸の火事ではなく,医療制度の再生においても取り組むべき多くの課題を提示するものである。東日本大震災以後の日本は,以前と同じ状態に戻るだけでなく,よりよいものとなることが課題であり,福島第一原子力発電所危機の背景にある日本型システムにおける問題の構造と向き合うことは重要であると考えられる。本稿では先行研究において日本の医療制度改革の軸として筆者らが提示した3),“ステークホルダー間の役割の再検討”,“保健医療サービスの質の向上”,“市民社会におけるコミュニケーション”の視座より,東日本大震災が提示する課題を検討した。日本型システムの改革実行における短期的な重点課題や対策は,当該地域特有のものとなると考えられるが,目指すべきシステムのあり方やその苦闘の過程は,日本および国際社会に対しても有益な知見になると考えられる。

ステークホルダー間の役割の再検討

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