<< 一覧に戻る

栄養のKEY NOTE

【蛋白質代謝】蛋白質の合成と分解

二川健奥村裕司

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 90-92, 2011

はじめに
 1958年フランシス・クリックにより提唱された生物学の中心教義であるセントラルドグマは,遺伝情報を基に蛋白質が合成される過程を主張している。つまり,DNA→mRNA→蛋白質に至る転写・翻訳の過程が生命活動を支えているのである。一方で,合成とともに生命活動に欠かせないものがあるとすれば,それは蛋白質分解である。一見無意味にも思える蛋白質分解は,栄養素(アミノ酸)の供給や機能性蛋白質の新陳代謝・活性化などに重要な役割を果たしている。本稿では,生命活動の鍵を握る蛋白質の一生(誕生~死まで)を合成,成熟,分解という観点から概説する。

蛋白質合成

 蛋白質は,DNAの一部にある遺伝子情報を基に作られている。この蛋白質合成には転写と翻訳という2つの過程が必要である(図1)。

まず,遺伝子情報が,細胞核内でRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)によってコピーされ,mRNAという分子になる過程を転写という。次に,このmRNAが核から細胞質へ移動すると,写し取ったmRNAの遺伝情報(アミノ酸の配列情報)を基に,リボソームという細胞小器官でtRNAに結合し活性化したアミノ酸が次々と結合され,蛋白質が合成される。この過程を翻訳という。合成された蛋白質は,そのままの形で生理機能(活性)を発揮するわけではなく,折りたたまれて一定の高次構造を形成(フォールディング)する必要がある。また,糖鎖付加や限定分解(特異的な酵素の切断による不活性型前駆体の活性化)などの翻訳後修飾を受けて初めて成熟蛋白質として機能することができる。さらに,合成された蛋白質は選別され,本来生理機能を発揮すべき細胞部位へと輸送(ソーティング)される1)。

蛋白質分解

 蛋白質分解とは,蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)によって行われる蛋白質の分解・消化である。アミノ酸の供給源となる食品の蛋白質消化に加え,蛋白質前駆体(酵素前駆体,ホルモン前駆体など)の最終形態への転換,分泌蛋白質の輸送過程での修飾(シグナルペプチドの除去),細胞外あるいは細胞内蛋白質の品質管理(変性蛋白質や不要蛋白質の除去)など,蛋白質分解は生命活動の重要な操作に用いられている2)。ここでは,細胞内蛋白質分解の代表的な機構を述べる。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る