<< 一覧に戻る

血栓症に関するQ&A PART6

7.腎疾患 Q52 バスキュラーアクセスの管理について教えてください

春口洋昭

血栓と循環 Vol.19 No.1, 175-177, 2011

Answer
はじめに

 いうまでもなく,バスキュラーアクセス(VA)は血液透析を行うためのツールであり,その役割がなされていればよい.そのため,VAになんらかの問題が生じた時に初めて,治療を行うとういう考え方が主流であった.しかし近年飛躍的に普及しているインターベンション治療では,閉塞する前に表れるVAの機能低下を把握する必要性があり,VAの日常管理の重要性が増している.VAの日常管理では,透析の支障の有無と理学的所見の変化に注意する.

透析時の問題

 脱血が良好でスムースな返血が行え,かつ再循環がなければ問題なく透析が行える.狭窄部の遠位で穿刺している場合,狭窄が進行してシャント血流量が低下すると,脱血不良を呈する.脱血不良は上腕動脈血流量として約350mL/min程度で生じることが多く,血流量を測定することで,脱血不良やシャント不全を予測することが可能となる.シャント血流量測定には,希釈法(HD02やクリットラインを用いたもの)が普及してきている.さまざまな方法でシャント血流測定が行われているが,超音波パルスドプラ法による上腕動脈血流測定は,シャント全体の血流を見ているのに対し,希釈法での血流は,穿刺間の血流を測定している(図1).

測定方法によって血流量やそれが意味しているものが異なることに留意しなくてはならない.
 見かけ上脱血が良好であっても,再循環があれば透析効率が低下するため,再循環の有無のチェックが必要となる.再循環測定法としては,BUN法(2点法,3点法)や希釈法があるが,その施設で可能な方法で測定するのがよい.透析患者全例に施行する必要はないが,透析後のデータが不良であったり,シャント血流が少ないのにもかかわらず脱血不良が生じていない場合は,再循環率を測定するのがよい.
 狭窄が進行して血流量が低下すると上腕動脈の抵抗が上昇する.そのことを利用して,超音波ドプラ法で上腕動脈の血管抵抗指数(resisitive index:RI)を測定し,シャント機能を評価することも行われている1)2).村上らは2)AVF 230例でシャント側上腕動脈のRIを測定し,その後6ヵ月間経過観察を行い,6ヵ月後の開存率を検討したところ,RI<0.600群は91.1%,RI≧0.600は64.4%であり有意差があったと述べている.RI 0.6以上の症例は,将来VA不全が生じる可能性が高いことを念頭において管理する必要があろう.
 静脈圧上昇もしばしば生じる.静脈圧は,脱血量,穿刺針のサイズ,ドリップチャンバーの位置,血圧などに左右されるが,おおむね上流の静脈狭窄の程度と相関する.静脈圧上昇が表れたら,超音波検査や血管造影を行い狭窄の評価を行う.たとえ強い狭窄があっても,側副静脈に良好な血流があれば,穿刺部を変更するだけで十分であり,あえて狭窄に対する治療の必要はない.しかし良好な側副静脈がない場合は,シャント内圧が上昇して閉塞する危険があるため,PTAの適応となる.特に人工血管症例は分岐がないため,静脈圧上昇により流出路静脈狭窄を早期に検出して,治療にあたることが重要となる.

理学的所見の異常

 VA管理ではシャントの理学的所見異常の有無をチェックすることも重要である.理学的検査には,視診,聴診,触診があるが,そのなかでは触診法が最も鋭敏で有用である.たとえ脱血が良好で,静脈圧上昇がなくても脱血部と返血部の中間に高度の狭窄があり,シャント血流量が低下していれば,閉塞の危険がある.このようなシャントは透析で症状が出現しないため,突然閉塞することがあるため注意が必要である.シャントの触診では,狭窄の前後で全く異なる所見が得られるため,透析に支障がなくとも,定期的に触診してシャントの状態を把握しておかねばならない(図2).

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る