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血栓症に関するQ&A PART6

6.末梢血管・深部静脈血栓症・肺塞栓症 Q48 深部静脈血栓症に対する経口FXa阻害薬の効果について教えてください

中村真潮

血栓と循環 Vol.19 No.1, 163-164, 2011

Answer
はじめに

 ビタミンK拮抗薬であるワルファリンは1960年代に商品化されて以来,半世紀にわたり唯一の経口抗凝固薬として使用されてきた.しかし,食物や薬剤との相互作用や薬効の遅発性などにより,使用に際しては定期的な抗凝固モニタリングを必要とするため使用し難い部分があった.現在,ワルファリンに代わる経口抗凝固薬として,活性化凝固第Ⅹ因子阻害薬(FⅩa阻害薬),および抗トロンビン薬が開発中である.これらの薬剤はモニタリングの必要がなく,いくつかのワルファリンの欠点を克服した新しい抗凝固薬として期待されている.本稿では経口FⅩa阻害薬の深部静脈血栓症に対する効果について,前臨床試験および臨床試験の成績を含めて紹介する.

経口FⅩa阻害薬の開発状況(表1)

 FⅩaを直接阻害することには多くの利点があり,またワルファリンの欠点を克服する抗凝固薬として経口吸収性の高い化合物を見出す努力がなされたが,多くは強塩基性を有して経口吸収性が不十分であった.経口FⅩa阻害薬に先行して,注射薬でありアンチトロンビンに依存する間接的FⅩa阻害薬フォンダパリヌクスが深部静脈血栓症の予防や治療で使用できるようになったが,近年,塩基性を低減することで抗Xa活性を維持しながら経口吸収性が改善された化合物が見出され,直接的FⅩa阻害薬の新薬候補が複数登場している.

前臨床試験における経口FⅩa阻害薬の有効性と安全性

 アピキサバンはウサギ腹部大動脈を用いた静脈血栓症モデルにおいて,0.11mg/kg/hの持続静注で血栓形成を50%抑制したが,出血時間は3.0mg/kg/hの高用量でも対照群の1.2倍にしか延長しなかった1).一方,ワルファリンは0.27mg/kg/dayの経口投与で血栓形成を50%抑制し,0.70mg/kg/dayで出血時間を対照群の3倍まで延長しており,抗血栓作用と出血時間延長との安全閾はワルファリンよりもアピキサバンで広いことが示された.リバロキサバンやエドキサバンについても,同様に出血時間を延長する用量より低用量で静脈血栓を抑制することが示されている.
 以上のように,経口抗Ⅹa薬の有用性と安全性のバランスはワルファリンよりも優れていると推測される.その他,経口投与後の作用発現が速やかであり,薬物や食物との相互作用のリスクが低く用量調節が不要などの特徴が認められている.

臨床試験における深部静脈血栓症に対するFⅩa阻害薬の有用性

 RECORD試験2)に基づいて,リバロキサバンは静脈血栓塞栓症の予防の適用でいくつかの国で承認されている.この試験では膝関節および股関節置換術後患者でリバロキサバン10mgとエノキサパリンが比較され,静脈血栓塞栓症の予防と全死亡に対するリバロキサバンの優位性が示された.一方,大出血の頻度は両薬剤で同等であった.
 わが国で行われたエドキサバン(図1)の膝関節および股関節置換術後患者の静脈血栓塞栓症の予防に対する第Ⅲ相試験では,エドキサバン30mgの1日1回がエノキサパリン2,000 IUの1日2回と比較され,有効性および安全性が確認されている.

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