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目でみるページ Cardiovascular Pathology

「慢性心筋炎」を見直す

加藤誠也岡部眞典

CARDIAC PRACTICE Vol.30 No.1, 7-11, 2019

侵襲に対する生体防御反応は総じて炎症とされるが,その概念を定めることは必ずしも容易ではない。あらゆる疾病は多少なりとも炎症性側面を有するが故,その範囲ないし境界を定めることは難しいとされる1)。しかしながら,病理形態学的に,あるいは臨床的に他の疾患,病態とも区別され,典型的な炎症と見做される病態は確かに存在し,実際の便宜上も含めてそれらは炎症として取り扱われてきた1)。典型的な急性炎症の徴候はローマ時代のCelsus・Galenosの述べた炎症の4(5)徴,すなわち発赤,腫脹,発熱,疼痛,機能障害であり,その後,長い年月を経て19世紀以降,VirchowやCohnheimの時代にそれらが病理組織学的な血流の変化(充血や血流静止),滲出反応ないし白血球の遊出そして細胞,組織の増殖に対応したものであることが判ってきた。一般に経過の長短によって急性,慢性の炎症が定義されるが1),慢性炎症の場合も急性期炎症が明らかな場合,病理形態学的にもその認識は比較的容易である。しかし,起因刺激あるいは早期の生体反応が弱く不顕性であった場合,炎症の結果として生じる実質の脱落,線維化を非炎症性の病態と区別するのは難しく,Virchow自身も著書,細胞病理学の中でかような結果の同一性からプロセスを断定することの困難さを述べている。拡張型心筋症dilated cardiomyopathy(DCM)の病因としてのウイルス性心筋炎あるいは自己免疫の関与についてはほぼ確立した感があるが2),慢性心筋炎chronic myocarditis3)や炎症性拡張型心筋症inflammatory DCM(DCMi)4)はそれらの臨床的意義を含めて未解決であり,日常診療の診断はもとより治療学への応用も道半ばにある。今回は慢性心筋炎について歴史的経緯を含めて見直し,課題を整理してみたい。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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