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用語解説

時間栄養学

Chrono-nutrition

柴田重信平尾彰子

栄養-評価と治療 Vol.29 No.3, 57-60, 2012

POINT
広義の「時間栄養学」とは時間=体内時計と栄養学が結びついた新しい学問(造語)である。食・栄養が体内時計の働きに影響を及ぼす可能性(体内時計作用栄養学の視点)や,体内時計の働きが食物・栄養の吸収や代謝に影響を及ぼす可能性(狭義の時間栄養学の視点)がある。つまり,時間栄養学とは食・栄養の働きを体内時計遺伝子の働きと関連づけて調べ,いつ(when)食べるかという新しい視点で栄養学を知ることである。広義の時間栄養学とは,体内時計作用栄養学と狭義の時間栄養学の両者を含めてを指す。英語ではChrono-nutritionあるいはChrono-dieteticsである。

Ⅰ はじめに

 1997年に,マウスから最初の時計遺伝子Clockが同定され,その後2~3年以内に,Per1,Per2,Per3,Npas2,Bmal1,Rev-erbα,Ror,Cry1,Cry2,Dec1,Dec2など多くの時計遺伝子が同定された。また,マイクロアレイなどを用いた遺伝子発現リズムの網羅的解析研究から,体内時計に支配されている遺伝子が次々と見つかり,全ゲノム遺伝子の15%(4,000~5,000程度)ほどはリズムを示す遺伝子,すなわちClock controlled geneと呼ばれるようになり,これらの遺伝子が時刻情報を組み入れた生体の生理学的働きに貢献していると考えられるようになった。以後,体内時計の分子機構や生理学的役割に関する研究が盛んになり,「時間生物学」という研究領域が確立した。ヒトの時計遺伝子のスニップス(SNPs)解析結果やヒトの種々の疾病の発症時刻にはリズム性がみられること,たとえば虚血性心疾患は明け方に発症することが多く,皮膚の痒みは夜に出現しやすいことなどから,疾病の管理に時刻を考慮した治療が有効であることがわかってきた。このような研究領域を「時間治療学」と呼び,時間治療学のなかでも,薬物治療に時刻・タイミングを考慮した「時間薬理学」(図1B)が臨床現場で実践されるようになってきた。

同様に,同じ食物でも,夜食として摂取すると太りやすくなるというように,食・栄養の働きにも時間の側面を考慮する考え方が重要となり,このような考えのもとに「時間栄養学」(図1A)が台頭してきた1)。時間栄養学を考える場合には,時間=体内時計と栄養学との接点を調べる学問であるため,体内時計の基本的な性質も理解する必要がある。

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