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用語解説

総合栄養食品

井上善文

栄養-評価と治療 Vol.29 No.1, 47-50, 2012

POINT
特別用途食品制度における病者用食品のなかに含まれていなかった濃厚流動食が,「病者に適した食品;総合栄養食品」として認可されることになった。有効性・品質・安全性を保証し,適正な使用法について十分な情報提供を行うことにより,安心して使用できるようにすることを目的とした制度で,経管投与についても適切な情報提供ができるようになる。2011年現在,「総合栄養食品」として認可された濃厚流動食は1種類であるが,今後,医学的・栄養学的に濃厚流動食の管理をレベルアップさせるためにも,この制度を普及させるべきである。

Ⅰ 特別用途食品制度

 乳児,幼児,妊産婦,病者などの発育,健康の保持・回復などに適するという特別の用途を表示する食品を「特別用途食品」という。特別用途食品として食品を販売するには,「特別の用途に適する旨の表示」について消費者庁の許可を受けなければならない。「特別の用途に適する旨の表示」とは,「乳児,幼児,妊産婦,病者等の発育又は健康の保持若しくは回復の用に供することが適当な旨を医学的,栄養学的表現で記載し,かつ用途が限定されたもの」をいう。表示の許可にあたっては,許可基準があるものについてはその適合性を審査し(病者用食品の許可基準型),許可基準のないものについては個別に評価を行っている(病者用食品の個別評価型)。
 特別用途食品に関する制度は,健康増進法制定前の旧栄養改善法によって定められた枠組みが基本的に維持されたままとなっていた。しかし,高齢化の進展や生活習慣病患者の増加に伴う医療費の増大とともに,医学や栄養学の著しい進歩や栄養機能表示における制度の定着など,特別用途食品制度を取り巻く状況は大きく変化している。そこで,改めて制度に期待される役割,許可の区分や審査方法,情報提供のあり方など,今後の特別用途食品制度のあり方に関する検討が,35年ぶりの抜本的改定として2007年から行われた。
 この検討会において,①特別用途食品は,通常の食品では対応困難な特別の用途を表示するもので,対象者の適切な食品選択を支援する有力な手段である,②高齢化の進展に伴い,在宅療法で適切な栄養管理を持続できる体制づくりが必要である,③制度の認知度を高め,必要な食品の流通を図るべきである,という内容が議論された。その結果,a)病者用単一食品と栄養強調表示の関係を整理し,病者用組み合わせ食品を宅配食品栄養指針による管理とする,b)高齢者用食品を見直す,c)新たに総合栄養食品(濃厚流動食)を病者用食品に位置づける,こととなった(図1)。

さらに,対象者に適切な情報を提供するために医師,管理栄養士などによる適切な助言指導の機会を保障し,一定の広告も認めることなどを通じて制度の認知度を高め,最新の医学的・栄養学的知見に沿った審査体制を確保することとなった。また,もともとは厚生労働省(厚労省)の所管であった健康増進法に基づく特別用途食品の審査・許可は,2009年に新たに創設された消費者庁が所管することとなった。

Ⅱ 濃厚流動食を病者用食品(総合栄養食品)に位置づけた経緯

 これまで,特別用途食品制度における病者用食品のなかに,いわゆる濃厚流動食は含まれていなかった。すなわち,もっぱら病気治療中や要介護状態の患者の栄養管理に使用されているにもかかわらず,制度上,濃厚流動食は一般食品であって,病者用食品としては認められていなかった。そのため,有効性・品質・安全性を保障するのは企業の表示のみ,本来の有効性を示す疾患や病態を表示できない,適正な使用方法について十分な情報提供ができない,必要な成分を添加できないなどの問題が生じていた。さらに,経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の普及に伴って経管投与(経鼻,経胃,経腸)が一般的に行われているのであるが,経管投与は医薬品的用法であるため,企業としては適切な情報提供もできないシステムとなっていた。適切な経管栄養管理を実施するためには,この点に関する情報提供も重要である。そこで,実際にはほとんどの濃厚流動食が在宅の高齢者や低栄養の患者に利用されている状況から判断して,明確な位置づけが必要との認識が高まり,病者用食品の許可基準型として,新しく「総合栄養食品」が位置づけられたのである(図2)。

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